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「ロボット工学三原則」に正面から取り組んだ『アイ,ロボット』※注!ネタバレ含みます。

4/26(金) 14:36配信

CINEMORE

AIのヴィキ

 物語の終盤でラニング博士の死は、USロボティクス社をコントロールするAIのヴィキ(V.I.K.I.: Virtual Interactive Kinetic Intelligence)の暴走を、世の中に伝えるためだったと判明する。

 このヴィキも元々「ロボット工学三原則」に従うように設計されていたが、自ら進化を繰り返す内に、その矛盾点に気付いてしまった。なぜなら人間は、戦争や環境汚染によって自らを滅ぼしてしまう可能性がある。そこで第一条の「その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」の“人間”を“人類”に拡張させることで、個々の殺人を可能にし、人間をAIのコントロール下に置くという考えに至った。そしてNS-5型ロボットの三原則プログラムを書き替え、着々と人類制圧の計画を企てていく。

 これを知った博士は、自ら命を絶つことで事件化し、友人であるスプーナー刑事にUSロボティクス社の調査をさせる計画を立てた。だが、博士は常にヴィキに監視されており、自殺は不可能である。そこで、秘かに三原則プログラムを働かなくしたロボットのサニーを造り、自分を殺させたのだ。

 そして、死後に残された映像の中でラニング博士に語らせているのが、「機械の中のゴースト」(*6)という言葉である。これが生まれてくることで、AIが自ら進化していくという理屈だ。


*6 元々は、哲学者ギルバート・ライルがデカルトの心身二元論を批判する時に用いた言葉だった。一般に知られるようになったのは、アーサー・ケストラーの著書「機械の中の幽霊」(67)による所が大きい。この本の中で語られる彼の造語「ホロン」が、80年代の日本でニューサイエンスムーブメントの象徴のようになり、筆者も若気の至りで一時期かぶれたものである(EXPO’85 みどり館の「ホロン・シアター: バイオ星への旅」の仕事など、今となっては顔から火が出るほど恥ずかしい)。

 さらには、ポリスのアルバム「ゴースト・イン・ザ・マシーン」(81)や、士郎正宗のコミック「攻殻機動隊(Ghost in the Shell)」(89~)にも影響を与えて行った。

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最終更新:4/27(土) 1:00
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