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「ロボット工学三原則」に正面から取り組んだ『アイ,ロボット』※注!ネタバレ含みます。

4/26(金) 14:36配信

CINEMORE

三原則の修正

 この設定は、「われはロボット」の一編である「災厄のとき」に登場した、修正第一条「マシンは人類に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人類に危害を及ぼしてはならない」からヒント(*7)を得ているのだろう。

 ここに登場する「マシン」とは、人間を圧倒的に超越した陽電子頭脳のことだ。これはまず、人間の数学者たちが高度な陽電子頭脳を作り上げ、そこに至るまでの一連の工程をその回路に与える。その頭脳は、人間と同じ作業をより洗練させて行うことで、遥かに優れた陽電子頭脳を生み出す。そしてこの頭脳が同じ手順を繰り返すことで、さらに高度な頭脳を生み出す。この工程を何回も繰り返すことにより、「マシン」は人間には理解不可能な未知の領域に達してしまったというものだ。

 アレックス・プロヤス監督と脚本のジェフ・ヴィンターは、この「マシン」のアイデアと、発明家・未来学者レイ・カーツワイルの著書「Age of Spiritual Machines」(邦訳: 「スピリチュアル・マシーン‐コンピュータに魂が宿るとき」をヒントにして、ヴィキというキャラクターを生み出した。

 実際カーツワイルは、AIが人類の知能を超える転換点である「シンギュラリティ」を、「自らを改良し続ける人工知能が生まれること」と説明しており、アシモフの「マシン」のアイデアとも共通している。ただアシモフ自身は、ロボットやマシンに対して性善説の立場をとっており、ヴィキのように人類を支配する邪悪な存在は登場させていない。(*8)


*7 さらに言えば、同じくアシモフの「ロボットと帝国」(85)の中に登場する、第零条「ロボットは人類に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人類に危害を及ぼしてはならない」も影響していると考えられる。

*8 逆にAIやロボットが人類を支配してしまう、「三原則」を無視した映画はたくさん作られている。具体的には『2001年宇宙の旅』(68)や『ターミネーター』シリーズ(84~)、『マトリックス』シリーズ(99~03)が有名だが、他にも名作が多数ある。

 例えば、米国の砂漠の地下に設けられた秘密研究所のコンピューターNOVACが人類に反旗を企てる、日本未公開の3D映画『gog』(54)。冷戦下の米国で開発された防衛用コンピューター「コロッサス」が、ソ連の「ガーディアン」と手を組んで人類を服従させるという傑作ハードSF『地球爆破作戦』(70)。自己増殖可能なコンピューター「プロテウス4」が、開発した科学者の妻に自らの子孫を生ませるSFホラー『デモン・シード』(77)などがお勧めである。

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最終更新:4/27(土) 1:00
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