ここから本文です

【平成の事件】主犯少年、報道された「凶悪性」の裏に「弱さ」 川崎中1殺害事件が問う少年法

4/26(金) 10:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

進む厳罰化、「セーフティーネット」の危機

 少年による重大事件が起きるたび、少年法は厳罰化が進んだ。契機は、14歳の中学生が逮捕された神戸連続児童殺傷事件(1997年)だった。2001年に法改正され、刑罰の対象が16歳以上から14歳以上に引き下げられた。

 12歳の少年による長崎男児誘拐殺人事件(03年)と、11歳の少女による佐世保同級生殺害事件(04年)が重なり、07年に少年院送致の下限が14歳から「おおむね12歳」に改正された。重大事件の犯罪被害者や遺族に対し、少年審判の傍聴が認められたのは08年。14年には、有期刑の上限が15年から20年に引き上げられた。

 山口・光市母子殺害事件の上告審判決(12年)以降、少年による死者2人の事件で死刑が言い渡されている。「重い罪を犯した少年については、成人とほとんど変わらない処罰もあり得るようになった」と元浪速少年院長の菱田律子さん(66)=和歌山市=はみる。

 現行法は、20歳未満の非行事件について、家庭裁判所送致を原則とする。家裁調査官や鑑別所は審判の資料として事件の背景や原因を調べ、審判が開かれれば、検察官送致(逆送)、保護処分(少年院送致や保護観察)、不処分といった処遇が決まる。審判が開かれない場合や不処分でも、教育的な措置が取られる。

 菱田さんによると、少年の非行内容のほとんどは成人で例えると起訴猶予に相当する比較的軽い事件だ。18、19歳が少年法の保護対象から外れれば、処罰を受けずに社会に復帰し、従来なされていた更生の機会を失う。

 「再犯率は高まるでしょう。治安はむしろ悪化するかもしれない」。菱田さんは警告する。犯罪を起こす恐れのある虞犯(ぐはん)も切り捨てられかねない。「少年法は、そうした未成年の負の連鎖を断ち切るセーフティーネットでもある」

「刑罰でなく教育」望む被害者

 3人が死傷した西鉄バスジャック事件(00年)で、17歳の少年に牛刀で切りつけられた山口由美子さん(69)=佐賀市=は、年齢の引き下げは「被害者の根本的な救済にならない」と反対する。

 唇や首に負った古傷の痛みは癒えず、冬場はとりわけうずくという。ただ、少年に厳罰を望みはしなかった。いじめや不登校といった不遇な環境が、事件に影響していると知ったからだ。少年は精神科病院に入院させられ、仮退院中だった。

 少年院で面会した少年は、過ちを悔い、山口さんに何度も低頭して謝罪したという。子どもに必要なのは「刑罰でなく教育」と確信した瞬間だった。

 川崎中1殺害事件も、成育上の未熟さに起因した「まさに少年事件だった」と須藤さんは振り返る。裏腹に、世論が厳罰化に振れた顛末(てんまつ)は「健全育成や矯正を重んじる少年法の趣旨に照らすと皮肉だ」と悔やんだ。

 法制審の答申が、近づく。

連載「平成の事件」
この記事は神奈川新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。「平成」という時代が終わる節目に、事件を通して社会がどのように変わったかを探ります。4月8日から計10本を公開しました。

3/3ページ

最終更新:4/26(金) 18:16
カナロコ by 神奈川新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事