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メルカリ小泉社長の告白① 「僕らが障がい者アスリートを支援する本当の理由」

4/26(金) 13:02配信

ゲキサカ

 創業6年あまりで、アプリダウンロード数が全世界で1億を超える国民的フリーマーケットアプリとなった株式会社メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏がゲキサカのインタビューに応じた。メルカリは、鹿島アントラーズのオフィシャルスポンサーのみならず、プロ野球の日本ハムやオリックスといったメジャースポーツへの支援にも積極的だ。しかし、J1鹿島の支援と並行して、11人の障がい者アスリートと契約し、うち3人が難聴のデフサッカー選手であることはあまり知られていない。小泉社長の本心を2回に分けて紹介する。

「企業は社員数が増えてくると、障がい者の雇用も当然やっていくという社会的使命、責任が出てきます。その中でウチらしいやり方はないか、と考えました。僕らは『新たな価値を生み出す世界的マーケットプレイスを創る』という大きなミッションがあり、世界を意識していることもあり、『世界でチャレンジしよう』という障がい者アスリートの方々を応援するのも、会社のミッションに合致していると考えました」

 2013年に10人でスタートした会社は、2017年に600人規模にまで急成長。2017年に車椅子バスケットの篠田匡世と土子大輔が入社し、その後、2018年にはデフフットサル日本代表の松本弘、上井一輝、デフサッカー日本代表の林滉大らも続いた。障がいのある陸上や水泳選手も在籍する。最初に篠田や土子を採用するときに、小泉社長は一緒にランチをとり、世界を目指す姿勢や生き様を知って採用を決めたという。

「2人ともバイク事故で足を切断して不自由になってしまったことに対して、全然くよくよしていないし、すごく未来志向。いい仲間になれる、と思ったんです。篠田君などは日本代表に入るかどうかの当落線上にいたとき、『このままだとまずい。もっと成長しないといけない』と言って日本リーグのチームに所属しながらオフシーズンにドイツに行ったと聞きました。その前向きさに尊敬するし、感心しますよ」

 メルカリに所属する障がい者アスリートが、オフィスに行く回数は月に数回程度。トレーニングをすることがいわば「仕事」のため、社員とアスリートの交流機会は限られるが、社内合宿で車椅子バスケットをする機会を作ったり、デフサッカーの松本や林が先生役となって手話教室も開いた。小泉社長が続ける。

「自分でやってみると、どんどん身近になってくるんじゃないかと思うんです。今の段階では『自分ごと化』するための背中を押すきっかけになっているぐらいかな。でも、たとえばメルカリの選手、ぼくらの仲間が世界一を目指して本気で頑張っていることがわかれば、社員の意識も変わってくると思います」

 小泉社長の身近に、自身が尊敬する障がい者アスリートがいる。義足の走り高跳び代表選手として、パラリンピックで5大会連続で入賞している鈴木徹選手は、小泉社長の高校時代の同級生だった。

「彼の存在は大きいです。先々月も飲みに行きましたよ。彼はハンドボールで普通にすごく活躍し、推薦で筑波大学に行く、というサクセスアストーリーを歩んでいたのに、卒業直前の春休みに交通事故で……。衝撃でしたよ。活躍していた友人が足を失うという……。足を失ってしまったら、ハンドボールではもうどうすることもできません。ただ一方で、僕も交通事故にあえばそうなるかもしれなし、全員そうなる可能性がある。徹は足を失っても自分の人生を頑張って、パラリンピックに出場した。そういう事実が障がい者になった方のそれが一つの希望や夢になれば、その人の人生は輝きますよね。ウチの選手にもそうやって、夢を与えられる存在になってほしいし、僕たちはそのための支援をしていきたい。また、僕は親族にも障がい者がいて、高校卒業するまでずっと一緒に生活していたので、変に身構えることもないんです。過度に『かわいそうだな』と接することも違うし、普通に接することが一番。これも社会の一部なんで、そういう世の中にしていきたいですね」

 上井は今年11月に行われるワールドカップ(W杯)で世界一になるために、2015年のW杯が終了した数日後、当時勤めていた会社を辞め、イタリアでプロ選手を目指した。今春、亜細亜大学を卒業した林も世界で戦えるFWになるため、現在ドイツで健常者のクラブを探している。メルカリ所属のサッカー選手3人とは別に、アルバイト契約をしている現役大学生のサッカー選手もいる。その選手は日本代表になって日が浅いが、今後続く海外遠征費を作り出すために、自らクラウドファウンディングを実施した行動力が採用の決め手になった。11月に行われるデフフットサルW杯、デフサッカーのデフリンピック(聴覚障がい者によるオリンピック)アジア予選に、メルカリに所属する4選手がすべて出場する可能性もある。

「彼らにはまず怪我をすることなく、あの表舞台に出ることに集中してほしい。甲子園球児は全国制覇を目指すけど、親御さんはまず出てほしい、と願うじゃないですか。その親御さんの気持ちですね。世界一になってほしい、という気持ちは二の次だし、口にすること自体、おこがましい。放っておいても彼らはやると思うし、僕らはそんな彼らを最大限サポートするだけです」

 小泉社長にとって、障がい者アスリート選手はメルカリという看板を背負った「広告塔」ではなく、純粋に応援したい仲間である。彼らの活躍が結果的に社員の意識喚起につながれば、なおいいと考えている。

「さきほど(障がい者がいることは)社会の一部、というお話をしましたが、会社という存在も社会の一部で、法人としての“人格”がある。かりに僕が死んでも、創業者の山田(進太郎)が死んでも、僕らの人生と関係なく、永続させなきゃいけないんです。インターネット企業というと、ポッと出てきて、ポッと消えていくような栄枯盛衰が早いイメージも持たれがちですが、僕は長く続くブランドとして築きあげたい。僕らは顧客サービスをやっているので、一般的なお客様の生活から『今』を感じ、未来を見通さなければいけないんですが、これからは特に人間にとってスポーツ、芸術といった文化的な豊かさが重要になってくると思っているんですよ」

 2017年からオフィシャルスポンサーとして支援を続ける鹿島は昨年、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)を制した。小泉社長は、優勝と同じぐらい実現したかったある意外な「願望」を胸に秘めていた。それは次回、紹介する。

最終更新:4/26(金) 13:08
ゲキサカ

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