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脳は老化しない 70歳でも成長するために大事なこととは?

4/28(日) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 世界が認める天才・葛飾北斎は73歳で「富嶽三十六景」を完成させた。その年に「ようやく絵の基本がわかるようになった」と語り、88歳まで筆を執った。人生後半に輝くには脳をどう鍛えればいいのか?

 101歳で札幌市在住の加藤栄さんが先日、放送大学(心理と教育コース)を卒業した。

 これが実に4度目の卒業となり、99歳で卒業した前回は「生活と福祉」で認知症や在宅介護を学び、97歳の前々回は「人間と文化」、95歳では「社会と産業」とさまざまな学問にチャレンジしてきた。北海道大学構内にある放送大学までは片道1時間かけて通ったというから頭が下がる。

 加藤さんは苦手な英語を克服しつつ、「自分から学びにいくからこそ楽しい」と言う。

 加藤さんのように年を取っても脳のパフォーマンスを上向かせることは可能だ。

 知能には、「結晶性知能」と「流動性知能」の2つがある。結晶性知能とは言語性の知能のことで、料理の手順など過去に得た経験が土台になるため、加齢による低下が少ない。もうひとつの流動性知能は、新しいことに適応する能力で、若い人ほどいい。

 ただし、知能は分野によってその最適な年齢が違ってくる。マサチューセッツ工科大学(MIT)のハーツホーン氏(認知科学)によると、「総合的な情報処理能力と記憶力」は《18歳前後》でピークを迎える(別表)。大学入試など詰め込み学習が得意な年齢だ。

《22歳》でピークになるのは「名前を記憶する能力」。中高年になると、急にアイドルや俳優の名前が覚えられなくなるのも当然だろう。

《32歳前後》では「顔認識能力」がピーク。上司や部下に囲まれ、多くの人脈を形成する年頃だ。

《43歳前後》になると、今度は「集中力」がピークを迎える。普段はボーッとしていても、ここぞという時に能力をフル回転させるコツをつかんでくるのだろう。

《48歳》は「感情認知能力」が最高潮で、“忖度”もしやすい。

《50歳》になると、「基本的な計算能力」がピーク。計算が苦手という人には意外な結果だ。

 さらに《67歳前後》で「語彙力」が最大。五輪担当相を事実上更迭された69歳の桜田義孝は例外だったに違いない。

 つまり、脳の働きはある年齢で全てがピークを迎えるということはありえないのだ。

 諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授(脳科学)がこう解説する。

「MITの研究では、新しいことに取り組む際の集中力は18~25歳がピークですが、仕事や経験の多さに起因する集中力は40代くらいに最大化します。集中力や判断力は年とともに伸びるものもある。やりたいこと、見たいことをやっていると、ニューロン(神経細胞)を増やすBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質が増えるのです。MRIを使って、73歳と75歳の脳の断面を調べた研究では、楽しいことをしている人の脳の萎縮は、していない人の半分でした」

 そもそも、脳は老化しない。体の細胞は次から次へと生まれ変わるが、ニューロンは基本的に一生同じままだ。では、なぜ物忘れなどが起こるかというと、ニューロンとニューロンを結ぶシナプスの働きが弱るため。老齢の脳はシナプスから放出されるアセチルコリン(神経伝達物質)の量が少ないことがわかっており、要するにシナプスを鍛えるといいことになる。シナプスは外から多くの刺激が与えられることによって発達する。

 4度も放送大学を卒業した加藤さんのように、まったく未知の分野に「自分から学びに行く」ことが大事なのだ。

 脳を正しく鍛えれば、70歳からでも脳はさらに成長する。

最終更新:4/28(日) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

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