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博多港の“日本一”を支える水先人 知られざる世界に潜入

5/2(木) 7:01配信

九州朝日放送

「一隻ボートが出てきております」

防波堤の中に入った船はいよいよ接岸の準備に入った。

操舵室に緊張が走る。

トランシーバーを握る山口さんの手に力が入る。

「竜昇NO2!竜昇NO2!近づいたら後方警戒よろしく」

無線連絡の相手は客船を警戒するタグボートやエスコートボートという小型船。不測の事態を警戒するためだ。すると、エスコートボートから連絡が入った。

「山口パイロット!東浜の方から一隻ボートが出てきておりますのでちょっと見ておきます」

すぐに山口さんはその小型ボートを見つけた。

「はい確認できました。警戒よろしく」

様々な情報が次々に飛び込んでくるが、その度に気象条件や海流、他の船との関係などを考えながら
的確な判断をしなければならないのだ。

巨大客船の“車庫入れ”

「今から左回頭にうつる」

山口さんが無線で号令をかけた。

巨大な客船がゆっくりと旋回を始める。

防波堤内で1回転して、バックで埠頭に接岸する。車の車庫入れは苦手な山口さんだが、接岸という船の“車庫入れ”は無駄のない見事な動きだ。

「岸壁、あと300m下がります」

巨大な船体が岸壁にみるみる吸い寄せられるように近づいていく。

「岸壁あと5mでギャングウェイポジションです」

海上での乗船からおよそ1時間。無事に接岸した。

山口さんは船長と握手を交わし、操舵室を後にした。

「出来て当たり前」 船乗りの集大成

ひと仕事を終えた1級水先人の山口さんに下船後、話を聞いた。

「こんなにして改めて自分が乗ってきた船を見ることは普段あまりありませんね」

当番の日は、ひとつのミッションが終わるとすぐに次の船へ向かうため、下船後に船をしみじみ見たりすることはないのだという。

「水先人というのは安全を売る商売です。出来て当たり前のことをいかに安全に安心に提供できるかというのが仕事です」

出来て当たり前、決して褒められることのない仕事を正確に着実にこなす。

「船乗りにとって、自分が住んでいる町の港の船を出し入れするのは憧れなんです」

中学を卒業して商船学校に入り、船乗りとして生きてきた山口さん。その集大成として水先人の仕事を選んだ。

「これまでやってきた船乗りの歩みを確認しながら自分も磨きながらやれる仕事というのはすばらしいと思います」

山口さんは誇らしそうに客船を見つめた。

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最終更新:5/2(木) 7:01
九州朝日放送

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