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後世想う中臣鎌足が退団の紅ゆずるに重なる、宝塚星組『鎌足』開幕

5/5(日) 18:04配信

Lmaga.jp

10月に宝塚歌劇団を卒業する星組トップコンビ、紅ゆずると綺咲愛里。退団公演を前に挑んだ「梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ」(大阪市北区)での公演『楽劇(ミュージカル)「鎌足-夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し-」』が、5月5日に開幕した。

【写真】紅と綺咲のほのぼのとしたシーンも

最初の元号「大化」の始まりとなる、大化の改新を成し遂げた中臣鎌足の人生にスポットを当てた本作は、「令和」の時代を迎えた日本国家のルーツを探る意味でも興味深い舞台に。少年時代に出会い心通わせた蘇我入鹿を、鎌足が討ち取るにいたった葛藤など、さまざまな人間ドラマが散りばめられている。

これまで宝塚の作品では悪役的な印象が強かった中臣鎌足を、純真さを失わず「志」のまま突き進む温かい人物につくり上げた紅ゆずる。冒頭のじっくり聴かせるソロナンバーから、後世に夢を託そうとした鎌足の想いが、愛する宝塚を去ろうとする紅自身に重なり胸を打つ。

綺咲愛里演じる車持与志古郎女(くるまもちよしこのいらつめ)と幼い頃から絆を深め、引き離される形になっても愛情を寄せる。つねに嘘偽りない感情を全身全霊でぶつける鎌足だからこそ、中大兄皇子をふくめ周りが心動かされるのだろうと納得できる。綺咲は可憐ながら誰よりも肝のすわった強い女性として、物語に凛と存在した。

大化の改新の立役者でありながら、ときに鎌足に試練を与える中大兄皇子に扮した瀬央ゆりあは、終盤での鎌足と目だけで会話する深い芝居が印象的。次第に修羅と化していく蘇我入鹿役の専科・華形ひかる、許されない愛に揺れる皇極帝役の有沙 瞳、飄々と物語を運ぶ案内人でありながら台詞一つひとつが重く響く船史恵尺(ふねのふひとのえさか)の天寿光希など、キャストたちが大いに健闘。飢饉と重労働にあえぐ民衆たちの芝居は鬼気迫り、物語にリアリティを与えた。

ときにロック調のナンバーまで盛り込まれる新鮮な楽劇(ミュージカル)は、楽しい演出もあり大千穐楽までますます魅力的に変容しそうだ。大阪公演は5月13日まで。

取材・文/小野寺亜紀

最終更新:5/5(日) 18:04
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