ここから本文です

ブラジル・サンパウロ 「世界最悪レベル」と言われる治安の悪さ(中)

5/8(水) 7:03配信

サンパウロ新聞

日本では考えられない自衛策

 サンパウロに赴任した日本企業の駐在員家族は、ほとんどが賃貸高級アパート(日本でいう高級マンション)で暮らす。出入り口にはガードマン兼受付があり、出入りは厳重に管理されている。最近建設された新しい高級アパートは、入り口の扉に指紋認証装置まで備え付けてある。入居に際して親指と人差し指の指紋を登録するのだが、係員から「通常の場合は人差し指を押してください。親指を使う場合は誰かに脅されて入ろうとする場合だけです」と言われ、「誰かに脅され親指で押した場合、どのように対応するのか」と聞いたところ、「警察に通報します」と言われ、「警察が来て、発砲騒ぎになれば最初に撃たれるのは私じゃないか」と絶句した。

 派遣社員でも社長や役員クラスは40代から50代が多く、子どもの教育もあり、単身赴任者が多い。彼らの場合は、長期滞在型のホテル住まいが多く、休日になると同じホテルに住む他社の人達と連れ立ってゴルフ通いが唯一の楽しみとなる。気楽に暮らしているかといえばそうではない。日本企業が300社以上加盟しているブラジル日本商工会議所が、2年前に防弾車に関するアンケート調査を行った。回答した企業数は80社と少ないのだがその80%が社用車は防弾車を使っているという結果が出た。そのほとんどが一流企業だが、これは日本本社の指示で社長や役員が乗る乗用車は防弾ガラス車に決められているのだという。かつて日本企業の現地社長が誘拐されたことがあり、神経を使わざるを得ないのだ。

 防弾車を使っているのは日本企業ばかりではない。ブラジルでは個人でも中産階級以上の人は防弾車に乗っている人が多く、防弾車使用は普通のことなのだ。信号待ちや道路が渋滞している場所では拳銃を持った強盗に脅されることが多く、自衛策として当たり前のことなのだ。ブラジルに住む人たちにとっては、取り立てて驚くことでもないが、治安の比較的いい国に住む人たちにとってはどのように映るのだろうか。

 子どものいない若い夫婦の場合、奥さんは同じような立場の奥さん同士でテニスやゴルフを楽しんでいる人が多いようだ。しかし、アパートから外出する場合は、治安上の問題があり、タクシーを使うか、自家用車を使い、徒歩で外を歩き回ることはしない。夜になっても、夫は仕事や接待で早く帰宅することはないため、一人での外出は危険で、自由に出歩けず、「せっかく海外で暮らしているのに、どこにも行けなくてかごの鳥同然ですよ」と愚痴る。

 確かにサンパウロ市内の高級アパートに限らず、戸建て住宅にしても鉄格子や高圧電流が通した高い塀に囲まれており、初めてサンパウロを訪れた人は、町全体がまるで牢獄のような感じを受けるという。(つづく)

サンパウロ新聞

最終更新:5/8(水) 7:03
サンパウロ新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

あわせて読みたい