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野良犬・野良猫を住民と当局と獣医師が三位一体で保護 イスタンブール

5/12(日) 10:48配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【5月12日 AFP】トルコのイスタンブールを訪れた観光客が、何世紀も前に建てられたモスク(イスラム礼拝所)やオスマン帝国時代の宮殿に感嘆する一方でよく驚くのが、市内のカフェやレストランでくつろいでいる野良犬や野良猫だ。

 地元住民の多くは、路上で暮らす動物を世話しようと、玄関先や窓の下に餌を入れた容器を置いている。市当局も、そうした動物の健康維持に力を入れる。取り組みの一つである「動物診療バス」は、市内各地を数日間ずつ停留しながら巡回する移動診療所だ。

 イスタンブール都市圏(IBB)勤務の獣医師、ニハン・ディンチェル(Nihan Dincer)さんは、住民たちは、寄生虫の治療を受けさせるために自分が世話をしている野良犬や野良猫をよく診療所に連れて来ると話した。「住民たちが絶えず接しているおかげで、動物たちも守られている」のだという。

 米ニューヨークのニュー・スクール(The New School)大学博士課程に在籍するミーネ・ユルドゥルム(Mine Yildirim)さんは、イスタンブールの住民が野良犬・野良猫の世話をする理由は、一つには「イスラム教の伝統。そしてもう一つは、オスマン帝国時代の公共空間がそういうものだった」からだと説明した。

 しかし、そうした街でも、20世紀初頭になると、欧米と同じように野良犬・野良猫の駆除政策が導入され、市当局は1990年代になってからも路上に毒を置いて野良犬・野良猫を駆除していたと、動物の保護活動を行っている「Dort Ayakli Sehir(「四肢動物の街」の意味)」のコーディネーターであるユルドゥルムさんは話す。しかし2004年に動物保護法が可決され、地方自治体に対して路上動物の保護が義務付けられた。

 イスタンブール市内には、移動診療所の他にIBBが運営する医療センターが6か所ある。当局はその目的について、約13万匹の野良犬と16万5000匹の野良猫の予防接種と不妊・去勢手術、その他の世話をするためとしている。

■森林地帯では野良犬に毎日ペットフード1トン

 動物たちは、医療センターで保護期間中に新たな引き取り手が見つかった場合を除き、治療やケアが終わるとマイクロチップを装着されて元いた場所に戻される。

 イスタンブールでは、このサービスを通してケアを受けた動物は2018年に7万3608匹に上る。2004年の2470匹に比べると大幅増だ。

 獣医師と動物看護師100人を抱えるイスタンブール市当局によると、2016年以降、同市内では狂犬病の発生件数は皆無だ。

 ベキル・パクデミルリ(Bekir Pakdemirli)農業・森林相は先月、同省は2009年から昨年までの間に、野良犬・野良猫の保護を支援するため全国の自治体に3100万トルコリラ(約5億6000万円)を拠出したことを明らかにした。

 イスタンブール市内の野良犬・野良猫は多くの場合、餌を十分にもらっている。だがIBBの獣医師ウムト・デミル(Umut Demir)さんは、イスタンブールの欧州側にある「ベオグラード(Belgrad)の森」と呼ばれる地域を巡回しながら、市を囲むこの森林地帯には「野良犬が独力で餌を得られる場所がない」と話す。

 そのため、ここには毎日約1トンのペットフードを積んだバンがやって来る。クラクションの音が聞こえると、野良犬たちはバンに向かって走り出す。

 スルタンガーズィー(Sultangazi)地区の医療センターで獣医師の代表を務めるトゥーチェ・デミルレック(Tugce Demirlek)さんは、たっぷり餌を与えて世話をすれば、野良犬も野良猫も気性が穏やかになり、攻撃的な行動を取らなくなると話した。

 だが、不妊・去勢手術を行っているにもかかわらず、この数年間、野良犬の数は横ばいだ。「計画的に手術を行っているが、捕まえられない犬たちが繁殖を続けている」とデミルレックさんは説明した。

 イスタンブールでは毎年、野良犬の子が生まれている。ここ最近でも、生後わずか40日ほどの子犬が道端でクンクン鳴いているのが見つかった。診察を終えてマイクロチップを装着された子犬は、飼い主を募集するために早速「動物診療バス」に写真が掲示された。(取材していた日の午後は)気に掛ける人は大勢いたが、引き取り手はまだ見つかっていない。

「明日も望みを懸けてみる」とディンチェルさんは話した。映像は、1月30、31日、2月4日に撮影。(c)AFPBB News

最終更新:5/12(日) 10:48
AFPBB News

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