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リニア時代に「SL列車」を走らせる意味って? 「乗りたくなかった」ベテラン運転士を突き動かしたもの

5/16(木) 7:00配信

withnews

全国各地からファンが集まるSLやまぐち号は、今年、運行開始から40年目の節目を迎えます。遠く関東からもファンが訪れる人気者です。特急なら1時間で着く区線を、SLは2時間かけて走ります。しかも時代はリニア。「撮り鉄」とのトラブルがあったとも聞きました。なぜSLがそこまで愛されるのか? 元国鉄マンの運転士、客車を忠実に再現した技術者、鉄道ファンの言葉から見えたのは「原点をまんま体感できる」魅力でした。(朝日新聞山口総局記者・藤野隆晃)

【写真】たんを吐き捨てるつぼまで再現、現代によみがえった「SL列車」のハンパないこだわりよう

私には分かりませんでした

やまぐち号は、山口市の新山口駅(旧・小郡駅)と島根県津和野町の津和野駅を結び、1979年に走り始めました。土日を中心に約2時間かけて、住宅街から田園地帯、山間部を走り抜けます。大型連休や夏休みなどには、前売りだけで満席になることもある、人気列車です。

私も2年前に山口県に赴任してから、何度もやまぐち号を取材しました。運転開始の頃から乗り続けている人、神戸から毎月のように乗りに来る人、埼玉からSLの写真を撮りに来る人……といった愛好家たちと接し、やまぐち号の人気を体感してきました。

けれど私には分かりませんでした。なぜSLがそこまで愛されるのかが。

SLには乗りたくなかった機関士

私も鉄道は好きです。大学時代には、鈍行列車で東京から長崎まで旅行したこともありました。それにしても、全国から老若男女がSL目当てに山口まで来るのはなぜか。疑問でした。

運行開始40年という節目に合わせた取材をしつつ、4月のとある日曜日、実際にやまぐち号に乗り込みました。

この日もほぼ満席。客車内には家族連れを中心に、写真を撮ったり、車窓を眺めたりと、思い思いの過ごし方をする人たちでにぎわっています。

午前10時50分、SLが新山口駅を出発しました。「ブォォォォォ」と汽笛を鳴らし、車内にはかすかな煙の匂い。グッグッとSLに引っ張られる独特の感覚もあります。

SLは石炭を燃やして走ります。釜を開け閉めして石炭を投げ入れ、火力を保つため、運転室の中は気温60度に達することもあるそうです。国鉄時代に入社し、約20年SLに関わるベテラン機関士の宅野孝則さん(59)は、同僚の様子からその過酷さを知り、「SLには乗りたくない」と思っていたほどでした。

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最終更新:5/16(木) 10:12
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