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リニア時代に「SL列車」を走らせる意味って? 「乗りたくなかった」ベテラン運転士を突き動かしたもの

5/16(木) 7:00配信

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「神は細部に宿る」

一方、運転室の過酷な環境がウソのように、客車の中は快適そのものです。昭和初期に走っていた車両をモデルに、新造された現在の客車。2017年から運転が始まりました。木目調の内装や、タイル張りの洗面台など、レトロな雰囲気を楽しめます。

それだけではありません。設計者たちは細部までこだわり、元の客車にあったたんを吐き捨てるための「痰壺(たんつぼ)」や、屋根の質感までモデルの客車に近づけていました。「神は細部に宿る」。そんな格言を、設計者たちを取材して実感しました。

住民とのトラブル乗り越え

車窓を眺めていると、やまぐち号を撮影する「撮り鉄」と呼ばれる人たちの姿を目にします。写真を撮りながら、客車に向かって手を振る彼ら彼女ら。乗客も手を振り返しています。

時に、近隣住民とのトラブルなど、批判を浴びることもある撮り鉄たち。山口線でもトラブルが起き、かつて住民から「締め出せ」と怒りの声があがったそうです。しかし今では、撮り鉄と住民が協力し合い、良好な関係を築いている地域もあります。

現代に携われる喜び

新山口駅を出発して約30分、車窓の風景が山がちになると、ぐっとスピードが落ちました。「シュッ、シュッ」という音が、平地に比べて大きくなります。運行区間に急坂があるやまぐち号。釜に石炭を入れながら、上り坂でも出力を維持し続ける必要があります。この峠越えは、機関士たちの腕の見せどころです。

SLを走らせることは、簡単なことではありません。老朽化したSLは不具合を起こすこともあります。客車の新造では、今の防火対策との兼ね合いという課題もありました。それでも、取材した方々は、現代にSLに携われる喜びを語っていました。

「SLは鉄道の原点」

かつては「鉄道=SL」でしたが、その存在は特殊なものになりました。電車に乗っていたら、トンネルに入って車内が煙たくなることはなく、汽笛を鳴らして周りの人が喜ぶこともないでしょう。五感で非日常を味わえるのが、SLなのです。

機関士の宅野さんは、「SLは鉄道の原点」と言います。やまぐち号が走り抜けた40年。その間、国鉄はJRに生まれ変わり、リニアモーターカーの実用化に向けて工事が始まりました。

技術が進歩するほど、原点であるSLの特別感は増します。同時に、昭和、平成から令和に移る中での「進化」もあります。鉄道の歴史を今に伝える運転士の努力、車両復元にかける熱意、撮り鉄とのコミュニケーション……。そんな、歴史の積み重ねが、新たな時代でもSLは多くの人を引きつけるのだと感じたやまぐち号の旅でした。

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最終更新:5/16(木) 10:12
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