ここから本文です

賃金上がってると主張するアベノミクスの実態―それは専業主婦世帯の減少だった

5/13(月) 12:11配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

2012年12月に第2次安倍政権の発足とほぼ同時に開始した景気拡大から6年が経過し、景気拡大期間は戦後最長となった可能性がある。

【全写真を見る】賃金上がってると主張するアベノミクスの実態―それは専業主婦世帯の減少だった

政府は、国全体の賃金総額である「雇用者報酬」が、名目でも(物価を調整した)実質でも着実に伸びていることをもとに、アベノミクスの成果を強調している。

だが、新聞社やテレビ局による世論調査では、景気回復について「実感している」と答えた人は少数派で、多数の人は「実感していない」と答えている。なぜ、マクロでは所得が増えているのに、多数の人は暮らし向きの改善を実感できないのだろうか。

筆者はこの疑問を解き明かすため、年代ごとに5つのモデル世帯を設定し、1世帯あたりの「実質可処分所得」の推移を推計した*。「実質可処分所得」とは給与収入から税や社会保険料を控除し児童手当などを足した「可処分所得」を物価で調整したもので、実質可処分所得の変動で家計の暮らし向きの変化を見ることができる。

*詳細は、是枝俊悟「家計の実質可処分所得の推計(2011~2018年)」(2019年4月12日、大和総研レポート)を参照。

すると、2012年から2018年にかけて、消費税率の引上げなどの負担増がありながらも平均値としては増加傾向にあることが確認できた。

妻の働き方の変化が決め手

しかし、これはあくまで平均値によるもの。「妻の働き方」別に分けると、また違った見方ができる。

30~34歳の4人世帯(夫婦がともに30~34歳で、2人の子のいる世帯)について実質可処分所得の変化を示したものが、次の図表である。

「30~34歳の4人世帯」を、「妻が正社員の世帯」「妻がパートの世帯」「妻が専業主婦の世帯」に分けて、それぞれの世帯で実質可処分所得の変化を見ると、いずれの世帯でも実質可処分所得はわずかながら減少している。

ではなぜ、実質可処分所得の平均値は増えているのか。2012年から 2018 年にかけて、妻が専業主婦の世帯比率が9ポイント低下し、妻がパートの世帯比率が 2ポイント、妻が正社員の世帯比率が 7ポイント上昇しているのだ。

構成比の差分を求めると、1割ほどの世帯において、専業主婦だった妻がパートや正社員として働き始めた(あるいは、結婚・出産を経ても専業主婦とならずに仕事を継続している)計算になる。つまり、こうした「女性の働き方」が変化した世帯で実質可処分所得が大幅に増加しているのである。

結局、30 代以上の世帯における実質可処分所得の平均値の増加は、専業主婦だった妻がパートや正社員として働くなど「女性の働き方」が変わった少数の世帯による大幅な実質可処分所得の増加によりもたらされており、「女性の働き方」が変わらない多数の世帯における実質可処分所得は若干減少していた。

これが、マクロでは所得が増加していても多くの人が実感を持てないゆえんではないだろうか。

是枝俊悟:大和総研研究員。1985年生まれ、2008年に早稲田大学政治経済学部卒、大和総研入社。証券税制を中心とした金融制度や税財政の調査・分析を担当。Business Insider Japanでは、ミレニアル世代を中心とした男女の働き方や子育てへの関わり方についてレポートする。主な著書に『NISA、DCから一括贈与まで 税制優遇商品の選び方・すすめ方』『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(共著)など。

是枝俊悟 [大和総研研究員]

最終更新:5/13(月) 12:11
BUSINESS INSIDER JAPAN

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事