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大気中を漂う人為起源の鉄微粒子を判別する方法

5/14(火) 17:12配信

サイエンスポータル

 鉄は、私たちの暮らしにとっても、地球の歴史にとっても、そして現在、未来の地球環境にとっても重要な物質だ。鉄の使用は人類の文明をおおきく変え、いまも鉄でできた品は身の回りに数知れない。私たちがいま鉄鉱石として掘り出して使っている鉄は、もとはといえば、地球に植物が出現して吐き出した酸素が海中の鉄分と結びついて沈殿したものだ。

 そして鉄は、植物の成長に欠かせない栄養素でもある。海の表面近くを漂う植物プランクトンは、大気から溶け込んだ二酸化炭素をもとに光合成で栄養分を作りだし、それを食べる動物プランクトン、それを食べる小さな魚……という食物連鎖で、地球の生き物を支えている。しかし、海中の鉄分が慢性的に不足している海域は世界のあちこちにある。海に鉄分を散布して、植物プランクトンを活性化させようとする研究例もある。鉄で植物プランクトンの活動が活発になれば、海の生産性が高まり、大気の二酸化炭素をよく多く消費して、地球温暖化の抑制に関係してくるかもしれない。

 この海の鉄分は、どのようにして供給されるのか。じつは、この基本的な事柄がよくわかっていない。大気中を漂うエーロゾル(エアロゾル)とよばれる微粒子として海にやってくる鉄分には、砂などが巻き上げられて飛んでくる自然起源のものと、陸上で石炭や石油などを燃やした際などに発生する人為起源のものがある。海に来る鉄分は、どんな由来のものが多いのか。そもそも、どうやって発生源を区別できるのか。

 東京大学博士課程の栗栖美菜子(くりす みなこ)さん、高橋嘉夫(たかはし よしお)教授らの研究グループが注目するのは、エーロゾルに含まれる鉄の同位体比だ。鉄には、ほんのわずかだけ重さが違う4種類がある。これらを鉄の同位体という。その9割が「鉄56」という種類で、6%ほどが、それよりすこし軽い「鉄54」だ。栗栖さんらは、エーロゾルの鉄に含まれる鉄56と鉄54の割合、すなわち同位体比を細かく調べた。

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最終更新:5/14(火) 17:12
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