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【米中貿易戦争】土壇場で中国が強硬に出た2つの理由―中国側は持久戦の構え

5/15(水) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

合意寸前とみられていた米中貿易協議は事実決裂した(5月10日)。

この5カ月間の交渉で対米妥協を続けてきた中国政府を、土壇場で「翻意」させた理由は何か。内幕情報と識者の分析から、2つの理由が浮かび上がる。

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原則で妥協せずと強気の副首相発言

第一は、合意文書に調印すれば、「共産党指導の堅持」という中国の最高指導方針を否定しかねないとの懸念。

それを解くカギはいくつかあるが、まず中国代表の劉鶴副首相の発言である。ワシントンでの協議終了直後、劉氏は中国メディアとのインタビューで、

「中国は原則にかかわる問題では決して譲歩しない」

と“強気”の発言をした。会見を開くこと自体が異例だが、朱建栄・東洋学園大教授は発言をこう読み解く。

「慎重な性格の劉氏はもともと、こんな強気の発言はしない。それに北京首脳部の事前了解なしにこんな発言はできません。劉氏は、交渉が妥結できるとは最初から考えていなかった。発言は(協議決裂後の)北京の新方針と作戦を明らかにするためでした」

新華社通信(5月12日) によると、中国が今回の協議で求めたのは次の3点だという。

1.合意後の追加関税の即時撤廃
2.アメリカ製品の輸入規模の縮小
3.協定本文での中国の主権と尊厳の尊重

劉氏が言う「原則にかかわる部分」の「原則」についてはさまざまな解釈ができるが、中国の核心的利益に関係するのは3の「中国の主権と尊厳の尊重」だ。

人民日報系の「環球時報」も今回の交渉に先立つ5月7日、「国家の核心的利益と人民の利益は断固として守り抜く」とし、この原則では「絶対に妥協しない」と強調した。劉発言と符合する内容である。

進めていた法改正の約束を撤回

では「中国の主権と尊厳」とは何を指すのか。ロイター通信 (5月7日)が、そのヒントを与えてくれる。ざっと紹介しよう。

2018年12月の首脳会談以来、5カ月間に及ぶ閣僚級協議では、中国の産業補助金削減や知的財産権保護、為替政策の透明化など7分野で協定文が作成され、150ページの文言を英語と中国語で互いに詰める段階まで進んでいた。つまり中国は自国の法制度を変更してまでアメリカの要求に応える準備を進めていた。

ところが5月3日にアメリカ政府に届いた中国側の修正文書は、

1.知的財産・企業秘密の保護
2.技術の強制移転
3.競争政策
4.金融サービス市場へのアクセス
5.為替操作

など、アメリカが要求した「法律改正の約束」を撤回する内容だった。

それまで「歴史的な取り引きは間近だ」と早期妥結を示唆してきたトランプ大統領が5日になって「対中制裁関税を引き上げる」とツイートしたのは、この修正文書をライトハイザー通商代表らから知らされたためだった。

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最終更新:5/15(水) 12:33
BUSINESS INSIDER JAPAN

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