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転売、参拝せず入手…御朱印集めのマナーは?

5/16(木) 11:44配信

産経新聞

 神社仏閣の参拝記念に授与される「御朱印」。改元前後には、平成最後や令和(れいわ)最初の御朱印をもらおうと全国で参拝者が列をなした。ただ、「神様からの頂き物」であるはずの御朱印を、インターネット上で転売するなど本来の目的から逸脱するケースも多発。参拝者のマナーが問われている。(有年由貴子、山本考志)

 5月1日午前0時、福岡県太宰府市の坂本八幡宮。「令和」の典拠となった万葉集の一節を詠んだとされる大伴(おおともの)旅人(たびと)ゆかりの同神社には、御朱印を求める参拝者がずらりと並んだ。早朝に訪れた埼玉県川口市の公務員、仲田正道さん(33)は「旅行中に令和ゆかりの地と知り、記念に御朱印をもらおうと予定を変更してきました」。

 新元号で注目を集めるなか、神職が常駐していない同神社では氏子会が事前に神職が祈祷(きとう)した御朱印を用意した。1日朝には、他の神社の神職も応援に駆けつけて対応。連休が終わるまで参拝者は途絶えず、氏子会員約50人とその家族も動員したが、疲れからか会員同士で口論が起き、体調を崩す人も出たほどだ。

 氏子会の高瀬昭登副会長(63)は「何とかトラブルなく乗り切れた」と安堵(あんど)の表情。今後は原則月曜と木曜以外の日に御朱印の窓口を開設する。

 大型連休中の参拝者数が、昨年同期間の倍以上の延べ88万2152人だった伊勢神宮(三重県伊勢市)。臨時の授与所を設け、1日は最大16人の神職が対応した。担当者は「御朱印を求める人数を数える暇もなかった」。同日は、東京・明治神宮で最大6時間待ち、大阪・住吉大社では同2時間半待ちだった。

 初穂料が300円程度の御朱印だが、日付が記されるため改元前後に授与されたものが、ネット上で高値で取引されるケースが相次ぐ。伊勢神宮の限定御朱印帳や御朱印などのセットには、一時10万円以上の値が付けられたほか、「10時間並んだ」と説明書きが添えられた明治神宮や、坂本八幡宮の御朱印も多数出品。「神様に恥ずかしくないのか」と批判的なコメントを書き込む人もいた。

 参拝者のマナー違反も目立った。特別御朱印を用意した東京・浅草神社には参拝者が殺到。フェイスブック上で今月10日、対応に当たった巫女(みこ)らに、一部の参拝者から「暴言・恫喝(どうかつ)また暴力に近い行為」があったと明かし、今年の「三社祭」の特別御朱印の授与中止を発表した。

 到津(いとうづ)八幡神社(北九州市小倉北区)では、御朱印を受けた後に「ネットで見たのと違う」と指摘する参拝者もいた。神社本庁の広報担当者は「御朱印は参拝された方と神仏とのご縁の証し。御朱印の扱い方をめぐっては、各寺社の気持ちを大切にしていただきたい」と話している。

 ■SNSがブームに拍車

 「御朱印集め」はなぜこれほどまでに過熱したのか。「御朱印は『旅の記録』としての意味もある。日付が残るため、改元の時期は特別な御朱印でなくてもプレミア感を生み出した」。御朱印に詳しい佛教大の八木透教授(民俗学)はこう分析する。

 八木氏によると、本格的なブームが始まったのは約10年前。「パワースポット巡り」人気に加え、長引く不況による社会情勢不安で、寺社参詣の需要の高まったことが背景にある。

 御朱印は、押印のほか、日付、祭神や本尊の名前を墨書きされる場合もあり、各寺社の独自色があるデザインも魅力の一つ。インターネットや会員制交流サイト(SNS)の普及で情報発信されるようになり、ブームに拍車をかけた。「こうした流れが、『欲しい』という感情を喚起させ、営利目的で入手する人を増やす原因になった」

 一部の寺社では、期間限定で特別仕様の御朱印を授与したり、豪華な装飾デザインで参拝者を集めようとするケースもある。「信仰に根ざしたものが商品化してしまうのは問題。寺社側も過度に希少価値を付けるのは控えるべきだ」と八木氏。参拝者には「トラブルで寺社が授与を中止してしまうと、信仰心から御朱印を求める人にまで迷惑がかかる。最低限のマナーを守るべきだ」と指摘している。

最終更新:5/16(木) 17:31
産経新聞

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