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【岡山から伝えたい】ブドウに打撃 果物王国の奮闘 復興目指す真備の農家【再配信】

5/16(木) 19:51配信

山陽新聞デジタル

【再配信:内容は2019年2月15日の初出時点のものです】

 岡山県内各地に深い爪痕を残した西日本豪雨から7カ月余り。エリアの3割に当たる1200ヘクタールが水没した倉敷市真備町地区では、果物王国・岡山を代表するブドウ品種・ピオーネの栽培にも深刻な影響が出ている。多くのハウスが浸水、倒壊したり、ブドウの木が流されたりしており、少なくとも今後数年間は生産量、出荷量とも減少が避けられない状況だ。「産地の名を廃れさせない」-。かつてない苦境の中、懸命に復旧作業に取り組む農家の姿を、地元紙の山陽新聞社がリポートする。

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黙々と作業

 倉敷市真備町地区のブドウ農家・木村恭介さん(46)=同町下二万=が、自宅近くのハウスの中で黙々と剪定(せんてい)作業に当たる。

 樹皮には今も、水をかぶった際の泥がこびりついている。だが、落とした枝の切り口は鮮やかな緑色。「枯れずに頑張ってくれている。生命力を感じる」と木村さん。

 真備町地区はピオーネの伝統的産地だが、多くの農家が被災したため生産量の減少が懸念されている。木村さんは自宅は無事だったものの、ピオーネとシャインマスカットを育てていたハウス3棟(計40アール)が被災。このうち2棟はハウスごと流され、残る1棟(25アール)も高さ約3メートルの天井まで冠水し、収穫直前の3千房が台無しになった。

 植えていた約80本は辛うじて枯れずに残っているが、根が長時間泥水に漬かったことが今後の生育にどう影響するかは未知数だ。それでも木村さんは「こうして手を動かしているだけでも気持ちが前向きになる」と、はさみに力を込める。

手痛い打撃

 ピオーネ(イタリア語で「開拓者」の意)は、巨峰とマスカット系の交配種。1957年に静岡県で誕生した。岡山県が83年ごろから4年がかりで、ジベレリン処理による「大粒・種無し化」の安定生産技術を開発し、県内各地で栽培が進んだ。全国有数のブドウ産地として知られる岡山では既に、マスカットをはじめとする他品種を上回る主力品種となっており、その栽培面積(2017年時点で875ヘクタール)や生産量、出荷量は全国一だ。

 中でも真備町地区は、「果物王国・岡山」の未来を切り開く品種としてピオーネ生産に先駆的に取り組んできた。木村さんの父・賢二さん(77)は、農協の営農指導員として技術開発やその普及に尽力。自らのハウスに県内各地の農家を招き、種をなくすジベレリン処理や房の整え方などを説明することもあった。

 天候が穏やかで温暖な県南部では、毎年6月中旬のハウスの加温物に始まり、露地物が出回る9月いっぱいまでピオーネを出荷できる。木村さんは「他の地域より出荷期間が長いのが一番の強み」と言う。

 木村さんらが所属する真備ぶどう生産組合は、2015年から高級贈答用商品として首都圏でのブランド化に力を入れた。17年度の出荷額は約2200万円と当初の約4倍に拡大していた。今回の被災はそれが軌道に乗り始めたさなかの手痛い打撃だった。

 「真備産のブドウは東京でも評価が高まっていただけに、農家の気持ちを考えると心が痛む」。被災翌月の昨年8月、真備町地区を視察した東京・大田市場の関係者からは産地復興を願う声が上がった。

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最終更新:5/16(木) 19:51
山陽新聞デジタル

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