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「怒り」と上手に付き合うには

5/17(金) 11:30配信

マイナビニュース

「怒り」と上手に付き合うには

悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。誰しもが抱いたことがある「イライラ」。今回は、その「怒り」の感情とどう付き合うか悩んでいる方に向けビジネス書をご紹介します。

■今回のお悩み

「せっかちなので周りにダラダラしてる人がいると腹が立つ。イライラしなくて済む方法が知りたい」(40歳女性/その他・専業主婦等)


「せっかちだから」、ダラダラしている人に腹が立つとのこと。せっかちな人は総じて動きにスピード感があり、完璧主義で、しかも心配性だったりするものなので、ある意味では仕方がないのかもしれません。

しかし「せっかちな人の傾向」がどうであれ、それ以前に気になることがあります。それは、「せっかちなので周りにダラダラしてる人がいると腹が立つ」という点。なぜならその場合、基準は自分にあることになるからです。

自分よりペースが遅いから、ダラダラしているように見え、そして腹が立つということ。

でも本来、人にはそれぞれ自分のペースというものがあります。なのにペースの遅い人が気になってしまうのは、自分よりも劣っているように見えるからではないでしょうか。

けれども、それがその人の本来のペースであったとしたら、他人が腹を立てるような問題ではありません。

そう考えると、ご自身が純粋に「イライラしすぎ」なだけだという可能性も否定できないわけです。

だとしたら、他人の落ち度(に見える側面)に注目して必要以上にイライラするより、ご自身のなかの「イライラのもと」を突き詰め、それをなんとかしてみたほうが、いろんな意味で有効なのではないでしょうか?

怒りのマネジメント「アンガーマネジメント」とは?

「アンガーマネジメント」ということばをご存知でしょうか?「アンガー(anger)は「怒り」という意味ですから、つまりは「怒りのマネジメント」ということになります。


「感情」の中でもとくにマイナスな結果を引き起こす原因となりがちな「怒り」に正しく対処することで、健全な人間関係をつくり上げる知識・技術を習得することです。(「はじめに」より)


こう解説するのは、『アンガーマネジメント入門』(安藤俊介著、朝日文庫)の著者。「日本アンガーマネジメント協会」代表理事であり、アンガーマネジメントを日本にいち早く導入した第一人者です。

そんな著者は、アンガーマネジメントの利点として、それが「技術」であることを指摘しています。そのため練習すれば、大なり小なり「誰にでもできる」というのです。

ただし、重要なポイントがあるようです。「怒らない技術」と表現されることもあるアンガーマネジメントですが、それは「怒りをゼロにする」という意味ではないということ。

なぜなら「喜怒哀楽」のなかにも含まれる「怒り」は、人間にとって必要な感情で、ゼロにできるものではないから。

つまり、それは「(どうでもいいことで)怒らない技術」であり、「(あとから後悔するようなことで)怒らない技術」。

「怒り」はなくせないものなのだから、ムダに怒らず、あるいは「怒り」の感情を上手に受け止めてプラスに生かすことが大切だという考え方なのです。


人の考え方は十人十色です。基本的には誰の考え方が正しくて、誰の考え方が間違っているということはありません。(中略)今、職場は「不機嫌な人」であふれているといいます。人が不機嫌になるのは、自分の考えや価値観がうまく通らないと思っているからです。あなたのまわりにも、自分の思いどおりにならないとすぐに機嫌が悪くなってしまう人が多いのではないでしょうか。社会で価値観の多様化が進んだ結果、イライラしやすい人、不機嫌な職場を生み出しているといえるのです。(36ページより)


そこで本書では、アンガーマネジメントの仕組みを解説し、「なりたい自分」をイメージすることの重要性を説き、カチンときたときの感情の抑え方を紹介するなど、「怒り」を抑えるためのコツをさまざまな角度から紹介しているわけです。

しかも決して難しくはなく、すぐに実践できることばかり。ピンときたことからひとつずつ試していけば、怒りの感情はだんだん収まっていくかもしれません。

「こうあるべき」が不機嫌を生む

住職である『いちいち不機嫌にならない生き方』(名取芳彦著、青春新書プレイブックス)の著者は、不機嫌そうな顔をしている人が増えた気がしませんかと聞かれたことがあるそうです。

もしもそうなのだとしたら、理由はなんなのでしょう?人を不機嫌にさせることが増えたのか、あるいは、ちょっとしたことにも敏感に反応して不機嫌になる人の割合が増えたのか。

おそらく後者であるはず。


不機嫌は、自分の都合通りにならないことが起きた時に現れる心の反応です。これを仏教では「苦」と言います。都合どおりにならないことは、「こうしたい」「こうあるべき」という都合があるかぎり、今も昔も、洋の東西を問わずいくらでも出てきます。最近になって都合通りにならないことが増えたわけではないでしょう。その日の天気や健康状態、レジの順番待ちや車の渋滞、人間関係、株価や為替に至るまで、自分の思い通りにならないことは星の数ほどあります。それにいちいち反応して不機嫌になれば、一日中、否、一生不機嫌な顔をして過ごす羽目になります。(「はじめに」より)


そこで本書では、世にあふれている“自分の都合通りにならないこと”をどのように考え、対処すればいいのかを、仏教の教え(特に知恵)を土台に展開しているわけです。

ポイントは具体的な悩みや愚痴をもとにしている点。そのため読者は、自分のなかにあるイライラの原因を見つけ出しやすいのです。たとえば今回のご質問に対しては、「『こうあるべき』が不機嫌を生む」という項目が役に立ちそうです。


仏教では「こうあるべき」というこだわりを持っていると、そこから外れたものが許せなくなり、心おだやかでいられなくなるので、こだわりからはなるべく離れたほうがいいと説きます。(中略)仏教の「こだわりを捨てろ」は、どんなことも縁(条件)によって結果が変化してしまうという「諸行無常」の大原則から出てくる教えのひとつです。その時代、その国、そしてあなたという条件が揃った結果として「こうあるべき」という信条にたどり着きます。しかし、「あなた」という条件が「他人」になれば「こうでなくても、まあいいか」という結論になることがあるのです。(128~129ページより)


たしかにそう感じることができれば、必要以上にイライラせずに済みそうです。

怒らないコツとは?

『怒らないコツ──「ゆるせない」が消える95のことば』(植西 聰著、自由国民社)の冒頭には、次のような記述があります。


「怒り」という感情は、どこから生まれてくるのでしょうか?それは人の「心」です。心から、怒りという感情は発せられるのです。言い換えれば、その心のあり方を変えることができれば、ささいなことで怒らないで済むようになります。(「まえがき」より)


その心のあり方を変えるために必要となるものが「知恵」なのだとか。そして、まず大切なのは、怒ることによって自分の人生には多くの災いや損が生じるという事実に気づくこと。

それに気づくこと自体がひとつの「知恵」であり、その気づきが「怒らない生き方」への出発点になるというのです。


怒らないコツに、「無心になる」ということがあります。つまり、「何も考えない」ということです。心理学に「ストップ・シンキング」という言葉があります。これは「思考停止」という意味であり、つまり「何も考えない」ということです。怒りの感情というのは、それほど長続きはしません。怒りの感情が持続するのは、心理学の研究では、およそ6~10秒程度だと言われています。その、ほんのわずかな時間だけ、「ストップ・シンキング」を試みます。つまり、「何も考えないでいる」ということです。そうすれば、自然に、怒りの感情は静まっていきます。(64~65ページより)


たしかに昔から、「怒りを感じたときは、心のなかで10数える」とよく言われます。つまり「ストップ・シンキング」は、怒りを鎮める方法として心理学的にきちんとした根拠があるのだと著者は言うのです。

決して難しいことではないだけに、試してみてはいかがでしょうか。


実は僕も若いころ(とくに20代には)、いつもなにかに腹を立てていました。でも、いまになって当時を振り返ってみると、それは自分に対する不満が原因だったんだなということに気づいたりもします。

そして、いまだからわかる重要なポイントは、「怒らない状態」は意外なほど快適だということ。とはいえまだまだ完璧ではありませんが、だからこそ今後も「怒らない自分」でありたいと感じています。


著者プロフィール: 印南敦史(いんなみ・あつし)


作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。

印南敦史

最終更新:5/17(金) 11:30
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