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『ガンダム』第1話の名シーンとBD1号機の狂暴性を、「嘘」みたいなアニメ的“誇張”と“省略”で具現化

5/17(金) 7:00配信

オリコン

 1980年に誕生し、来年40周年を迎える「ガンプラ」。その歴史を振り返った時、モデラーたちの妄想を具現化する情景模型(ジオラマ)は、人気ジャンルとして親しまれてきた。そんな同ジャンルで、「超遠近法」という独自技法で一目置かれているのが、トップモデラー・いべまに氏だ。今回、氏が手がけた名シーン再現ジオラマを紹介すると共に、「超遠近法」の技法や、ジオラマ制作の舞台裏について聞いた。

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■「エッシャーのだまし絵」のように情景としての超遠近法作品を目指した

 ガンプラのジオラマにおいて、アニメ的“誇張”と“省略”を具現化した「超遠近法」を提案するトップモデラー・いべまに氏。ガンダムの名シーンを再現する、この技法のポイントを解説してもらった。

「超遠近法は、手前に見える部分にスケールの大きいパーツを用い、奥に見える部位ほど小さいスケールのパーツを組み合わせて作り上げます。紹介している『機動戦士ガンダム』第1話のシーンでは、ガンダムの左手が1/35、胴体がメガサイズの1/48、右腕、左足先はマスターグレードの1/100を組み合わせて使用しており、奥に見えるザクは1/144のHGサイズです」と具体的に解説。そして、技法のイメージとしたのは、ずっと登っている階段が描かれた建物の絵などで有名な「だまし絵」の巨匠、マウリッツ・エッシャー氏の作品なのだという。

 本作、『初代ガンダムのザク撃破』作品を作ろうと考えたきっかけについて聞くと、マスターグレードのRX78-2 Ver.O.Y.Wの箱絵としても描かれたシーンであり、構図の構成などもここから広げて制作したとのこと。

 ただ、先例のない模型を作ることが多いため、苦労もつきないという。実際、ジーンのザクが爆散する火炎球に施した電飾とジオラマベースはいずれも初の試みだったため、Twitterや模型誌を読み漁り、先人の技法を学びながら、失敗を繰り返しつつ完成させたのだそう。

 「火球は2回、ジオラマベースは3回作り直したのはここだけの話で(笑)。最初、ジオラマベースは真四角の平面で制作しましたが、最終的には遠近感を増幅して表現できるようにするために、ジオラマベースを奥に行くに従って台形にし、さらに両脇を徐々に盛り上げて制作。広角レンズで撮った写真にあるような『曲がって見える感』を演出しています」

 異なるスケールのガンプラパーツを複数組み合わせて制作するのが「超遠近法」の作法であり、頭に描いたイメージに近い見せ方に各々のパーツが納まった時には「気分がアゲアゲです(笑)」と、モデラーならではの“カタルシス”があると笑顔で語った。

■作品に練り込まれた「嘘」で表現する“迫力”や“奥行き

 アニメは“省略”と“誇張”と言われるが、それをガンプラで表現するのは難しい。とはいえ、「ガンプラのバランスを崩すことで生まれる美しさや面白さが根っこにある」と、いべまに氏は言葉に力を込めた。

 「以前ORICON NEWSの記事で紹介されていた『だまし絵ガンプラ』の巨匠・今日さん(@kyo512a)の作品や、n兄さん(@n_blood7)の『ボックスアート再現ザク』にも感じるものですが、生のガンプラ作品や画像を見た方が、作品に練り込まれた『嘘』の部分に奥行や迫力を感じてもらえることが喜びだったりします」

 そして、実際にそれを分かりやすい形で表現したのが、いべまに氏の代表作のひとつ『機動戦士ガンダム外伝 ザ・ブルー・ディスティニー』のジオラマだ。この作品によって、モデラーとして多くの“気づき”が得られたと言う。

 「部分的に大きさの違うパーツを組み合わせて制作しますが、中途半端な大きさの変化ではあまり迫力のあるものにならない、と感じました。超遠近法を使った作品にチャレンジする場合、こんなに大きさの違うものを組み合わせたらおかしくなるのでは?と心配するくらいのパーツ選定をしてみることが、迫力のある作品に仕上がる第一歩のような気がしています。あと、超遠近法は基本的に正面側からの見え方に拘った作品になるので、横や後ろからの見た目はキッパリと捨て制作に臨むことがキモになると思います」

 事実、本作のベースとなる胴体や頭部は1/144、右足、右肩部を1/100、右腕にはUCハードグラフの特技兵セットの1/35のものを改修して使用。また、メガサイズ1/48ガンダムの頭部を改造して壊れたジムの頭部を制作するなど、メリハリの利いた作品であることは一目瞭然だ。

 ただ、試行錯誤を繰り返してきたため失敗もあった。また、強調した演出に「やりすぎ」という声もある。しかし、いべまに氏には明確なコンセプトがある。「この言い方には語弊があるかもしれませんが、失敗させること、異形に見せることこそ超遠近法の正攻法と捉えていますので、失敗と思える部分も作品の一部としてそれなりに見えるものだと思います。逆に、あまりメリハリのないものは超遠近法の作品としては成功とは言えないような気がします。ジオラマの魅力は『物語の一瞬を切り取って再現できること』であり、ガンプラ単体では表現しきれない空気感だったり、壊れたビル、足跡や破壊の痕が残る地面で、見る方に物語を妄想させること。この感覚を、今後も大事にしていきたいと思います」

(C)創通・サンライズ

最終更新:5/19(日) 15:25
オリコン

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