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少数民モン、民族の遺産を守る闘い ベトナム

5/19(日) 15:00配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【5月19日 AFP】ベトナムの少数民族モン(Hmong)のブオン・ズイ・バオ(Vuong Duy Bao)さんは、北部ハザン(Ha Giang)省にある祖父が建てた木造の御殿を、当局から取り返そうとしている。

 軍閥の有力者だったバオさんの祖父が、アヘン事業で成した財で1903年に建てたこの屋敷には、かつてこの地域で栄えた産業をしのばせるケシの花が彫刻された柱や、旧宗主国フランスから輸入された鉄で作られたフェンスなど、歴史の跡が残されている。

 バオさんは、地元当局がこの資産を同家から取り上げ、現在は返還を拒否していると主張している。当局はこの建物を博物館として利用している。

 バオさんはハノイで暮らしていたが、公務員を退職した後に地元に戻った際、地元当局がこの御殿の所有権を取得していたことを知った。当局はバオさんが不動産の譲渡証書を出すことができなかったのを理由に、バオさんの所有権を認めなかったのだ。

 だがバオさんは、この建物の建築当時は公文書というもの自体が存在していなかったと指摘し、バオさん一家とこの御殿とのつながりはこの地域の歴史書を見れば分かると主張している。博物館に展示されている写真にも、バオさん一家と御殿とのつながりを示すものがあるという。

 多くのモンの人々は、政府が観光収入を増やすために彼らの文化遺産を勝手に奪っているのではないかと思っている。バオさんにとって、御殿奪還の闘いは個人的な域を超えるものだ。

 モンの遺産はモンの人々の手にあるべきだとバオさんは考える。中国を起源とする結束の固いこの少数民族は、米カリフォルニア州やミネソタ州、ラオスからタイに至るどの地に定住しようと、誇りを持って自分たちの慣習を守っている。

■「共同体精神」

 ベトナム国内に約100万人いるモンの人たちは過去10年間の経済成長から大きく取り残されており、その60%以上は貧困ラインを下回る生活だ。ベトナム戦争(Vietnam War)中に米中央情報局(CIA)が反共のラオスのモンの人たちを雇い入れたこともあり、ベトナムでモンと中央政府の関係は良好とはいえない状態が長く続いてきた。

 人類学者のゴ・タム(Ngo Tam)氏は2016年の著書「The New Way: Protestantism and the Hmong in Vietnam」のなかで、ベトナムの少数民族の発展プログラムにおいて、モンは他のどの少数民族よりも置き去りにされていると指摘した。

 ハザン省当局は、モンの人たちを過酷な貧困から脱却させる最良の方法として観光振興を進めている。同省は基本計画の中で、2030年までにこの地域を一大観光地にしたいという目標を掲げ、当局はすでに一連の「伝統文化村」を開設している。地元のモンの人たちは、麻の民族衣装を着て伝統的な家を建てることを奨励されている。そして数日間にわたって酒盛りが続くモンの最も神聖な儀式である葬儀や結婚式を短縮するよう要請されている。

 だが少数民族は、必ずしもベトナムの観光ブームの恩恵を受けているわけではない。ベトナム北部の観光地サパ(Sapa)の住民は、多数派民族キン(Kinh)のホテル所有者が大きな収益を得る一方、少数民族の女性や子どもたちは中国製生地や偽物の銀製品を行商していると不満をもらす。

 バオさんがモンの御殿の所有権を回復すれば、自らの歴史を復活させ、さらに地元の観光収入から恩恵を受ける小さな一歩になるかもしれない。御殿の奪還で、置き去りにされ権利を奪われたモンの人々が、魂の故郷を取り戻せることをバオさんは希望している。

 映像は2018年10月26日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:5/19(日) 15:00
AFPBB News

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