ここから本文です

全米プロ連覇、ブルックス・ケプカが教えてくれたゴルフの本質【舩越園子コラム】

5/20(月) 12:49配信

ゴルフ情報ALBA.Net

「全米プロゴルフ選手権」を制したブルックス・ケプカ(米国)の表情は充足感に満ち溢れていた。

豪打さく裂! ブルックス・ケプカの超最新スイング写真

タイガー・ウッズ(米国/2006年と2007年)以来、史上7人目の大会連覇。同大会における史上5人目の完全優勝。2017年「全米オープン」以降、出場したメジャー8試合で4勝を挙げ、数々の記録を打ち立てたケプカは、この優勝で世界ナンバー1の王座に返り咲いた。

「これまでで最も興奮している。最も満足している」

そう言って笑顔を見せたケプカだが、彼が感じていた興奮や満足感は、自身が打ち立てた記録や数字ではなく、この4日間における自身の戦い方に対するものだったに違いない。

いわゆる“非の打ちどころがない”ゴルフ、教科書のような理想的なゴルフができたとケプカが感じたのは、振り返れば初日だけだった。べスページ・ブラックのコースレコード「63」をマークした初日のゴルフだけは「Aゲーム」だったとケプカは満足していた。

しかし2日目は、「65」とスコアを伸ばし、2位との差を前日の1打差から7打差へ一気に広げたにもかかわらず、「Aゲームではなかった」と不満を露わにしていた。

逆に3日目はイーブンパー「70」とスコアを伸ばせなかったが、「昨日よりは良かった」。だが、この日のゴルフもケプカが満足できるような「Aゲーム」ではなく、2位に7打差を付けながらも彼の心は穏やかではなかった。

そして最終日、ケプカのショットは4日間で最も乱れ、バックナインでフェアウェイを捉えたのはわずか3回。ラフに苦しみ、短いパットを何度か外し、11番からは4連続ボギーを喫して、スタート前は7打もあったダスティン・ジョンソン(米国)との差は、ついには1打まで縮まった。

そう、スイングの美しさやストロークの完成度、ショットやパットの出来栄えだけに目をやれば、最終日のケプカのゴルフは「Aゲーム」では決してなかった。

しかし、それでも勝利できたワケは、ゴルフが4日間、72ホールの戦いであることをケプカが誰よりも理解し、その長い戦いを誰よりも見事に乗り切ったことにある。

ケプカは予選2日間にスコアを伸ばせるだけ伸ばしたからこそ、プレッシャーがかかる決勝2日間はスコア上は誰よりも余裕を持つことができた。それでもジョンソンとの差がみるみる縮まっていった最終日後半、ケプカを襲ったプレッシャーは想像以上のものになった。

「DJが“来てる”と思った。彼ならきっと来るだろうとは思っていたが、(後半は)本当に“来てる、来てる”と感じながら戦った」

DJチャージに心を揺さぶられたケプカは、ラフにつかまり、パットを外し、次々にボギーを喫した。だが、まだ終わりではないと自身に言い聞かせ、残りの4ホールで「なんとか踏みとどまることができた」と安堵の笑顔を見せた。

逆にジョンソンはケプカに1打差まで詰め寄った途端、次なる16番、17番で連続ボギーを叩き、逆転勝利から遠ざかっていった。

「ゴルフは何が起こるかわからない」と言われるが、それは「いいこと」も「悪いこと」も起こることを意味している。

そして、「悪いこと」「望まざること」は、往々にして「いいこと」が起こった途端にやってくる。

それがゴルフであり、4日間72ホールの戦いはその繰り返しである。そうやって次々に訪れる山と谷を最も見事にコントロールし切ったこと。それがケプカの勝因だった。

「この決勝2日間は、僕にとって、まさにバトルだった。なんとか踏みとどまり、そのバトルを乗り切ったことが、今、僕の胸に最も強く響いている」

だから、この全米プロ優勝に「最もエキサイトしている。最も満足している」とケプカは胸を張った。

「最も大きな自信になった」

教科書のようなスイングやストロークばかりを追求していても、実戦に勝つことはできない。奇跡のようなスーパーショットやスーパーパットより、72ホールの長丁場を我慢強く戦い抜く地道な努力と強い精神力、何より忍耐こそが何よりの武器になる。 

そういう考え方、そういう姿勢のケプカは、だからこそメジャー4勝の世界一に輝くことができた。彼の勝利は、そんなゴルフの本質を世界中のゴルファーに教えてくれた。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

(撮影:GettyImages)<ゴルフ情報ALBA.Net>

最終更新:5/20(月) 12:49
ゴルフ情報ALBA.Net

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事