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映画史に強烈な爪痕を残した『ファイト・クラブ』の凄みとは?

5/20(月) 10:22配信

CINEMORE

1999年に登場した『ファイト・クラブ』のインパクト

 思い返せば1999年は、奇抜だが中身の濃いインパクトのある傑作が多かった。『マトリックス』『シックス・センス』『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』などのメガヒット作はもちろん、『アメリカン・ビューティー』『アイズ・ワイド・シャット』『マルコヴィッチの穴』『マグノリア』などの作家性の強い作品まで、とにかく粒ぞろい。

 そんな中でも『ファイト・クラブ』のインパクトは、強烈という言葉では言い表せない。こんなにも自分の奥に入ってくる映画は、そうそうあるもんじゃないし、製作から20年を経た現在も色あせない。本稿では、そこに何が宿っていたのかを検証する。

 まずはストーリーを簡単に振り返っておこう。主人公の“僕”は都会の自動車会社に勤務する若いサラリーマン。雑誌やテレビで紹介されるようなライフスタイルに憧れて北欧製の家具を買い漁るも、理想を追い求める生活に疲れて不眠症に悩まされている。そんなある日、出張時の機内でタイラー・ダーデンと名乗る自由人と出会い、意気投合してバーで酒に酔ったあげく、殴り合う。

 そんな肉体の痛みに奇妙な爽快感を覚え、彼らを中心に同じようなモヤモヤを抱えた人々が集い、”ファイト・クラブ”という殴り合いのグループに発展。タイラーはそのカリスマ的なリーダーとなる。一方で、自由奔放で皮肉屋の女性マーラが彼らの生活に介入。“僕”は彼女を嫌っていたが、タイラーは彼女と寝る仲になり、ふたりの男の友情はぎくしゃくし始める。やがてタイラーは自家製の爆弾を武器に、仲間を率いて文明社会への攻撃をしかけようとする。テロも同然のこの計画を、“僕”は阻止しようとするが……。

世代を代表する小説から、世代を代表する映画へ

 原作は1996年に発表され、当時の若者の等身大の感情をバイオレンスとともに切り取ったチャック・パラニュークの同名小説。若い感情にリアルに響く小説はいつの時代も生まれてくるもので、筆者も初めて読んだときは衝撃を受けたし、同時に80年代の「ブライト・ライツ、ビッグ・シティ」「レス・ザン・ゼロ」のような影響力のある小説を思い浮かべた。ただ、この2作は映画化もされたが、小説ほどのインパクトがなかったというのが正直なところ。90年代のモダン小説のベストセラーでは「アメリカン・サイコ」も映画化されたが、こちらも物足りなかった。なので「ファイト・クラブ」の映画化にも、最初はあまり期待していなかった。

 当初、このプロジェクトは『トレインスポッティング』(96)のダニー・ボイル監督のもとに持ち込まれた。しかし、ボイルは「ファイト・クラブ」と同年にアレックス・ガーランドが発表した、これまたベストセラー小説「ザ・ビーチ」の映画化プロジェクトに入れ込んでいたため、実現はかなわず。代わって監督として白羽の矢が立てられたのがデヴィッド・フィンチャーだ。

 初長編監督作『エイリアン3』(92)ではシリーズ最大の失敗作というレッテルを貼られたフィンチャーだが、メジャースタジオの意向を反映せざるを得ない新人監督ではできることも限られており、不評も致し方ない。この反省を活かし、彼は自身のビジョンに則った作品を撮ろうと決意し、非メジャーのスタジオで創作の自由を得て完成させた『セブン』(95)で成功を獲得。メジャーに再昇格して手がけた『ゲーム』(97)も好評を博し、とにかく勢いに乗っていた。

 『ゲーム』の来日キャンペーンで取材した際には、「『エイリアン3』の悪評に対しては何も弁解できないが、『セブン』『ザ・ゲーム』に関しては、どんな批判にも反論できる」と胸を張っていた。そんな彼が「ファイト・クラブ」をどう料理するのか?

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最終更新:5/20(月) 10:26
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