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実質価値の低下する賃金、年金、預貯金。投資信託購入で一部対策も可能

5/20(月) 18:00配信

マネーの達人

厚生労働省の不正が各種保険給付に影響

賃金や労働時間に関する統計のひとつである「毎月勤労統計」を作成する際の調査において、厚生労働省が2004年頃から不正をしていたことが、大きな話題になりました。

最近は少し沈静化している印象がありますが、まだ無関心になってはいけないと思います。

その理由として、雇用保険や労災保険、船員保険の保険給付にダイレクトにかかわっているからです。

例えば、基本手当(失業手当)の金額は毎月勤労統計をもとにして決められるため、調査の不正により保険給付が過小支給になっている方が、かなり存在しています。

厚生労働省の発表によると、過小支給の可能性がある方は約2000万人、総額は約5300億円に達するそうです。

この過小支給がきちんと解決されるまでは、関心を持っておいた方がよいでしょう。

国民の実感を表している「実質賃金」

この統計調査の不正問題を取り上げたニュースによく登場していた、「名目賃金」と「実質賃金」という二つの用語にも、注目しておく必要があります。

・ 名目賃金:給与明細などに記載されている額面上の賃金
・ 実質賃金:名目賃金から物価の変動による影響を差し引いたもの

なぜ物価の変動による影響を差し引く必要があるのかというと、たとえ賃金が10%上がっても、物価が20%上がっていたら、購入できるモノが減ってしまうからです。

野党は、「アベノミクスにより名目賃金は上がったけれども、実質賃金は下がっている。だから国民は景気回復を実感できない」と与党を批判していました。

また、ある評論家の方は、実質賃金が下がっているのを隠すために、統計調査の不正をしたと推測していました。

これらが正しいのかはわかりませんが、野党が主張するように、名目賃金より実質賃金の方が、国民の実感を表しているという点は、間違いないと思うのです。

公的年金も実質的な価値が下がっている

公的年金(老齢年金、障害年金、遺族年金)は原則として、賃金や物価の変動率により、新年度が始まる4月から金額を改定します。

2019年度に支給される公的年金は、賃金や物価が上昇したため、前年度より0.1%の増額でした。

増額になって良かったのですが、年金額の改定に使われる賃金の変動率は0.6%、物価の変動率は1.0%だったため、これくらい年金額が増えてもおかしくはないのです。

それにもかかわらず0.1%の増額にとどまったのは、賃金や物価の変動率から、現役人口の減少や平均余命の伸びをもとに算出した「スライド調整率」を控除する、マクロ経済スライドが発動されたからです。

まず賃金の変動率と物価の変動率を比較し、「賃金の変動率(0.6%)<物価の変動率(1.0%)」になる場合には、低い方の賃金の変動率で年金額を改定するため、0.6%の増額になります。
そこから2018年度に控除できなかった0.3%のスライド調整率と、2019年度のスライド調整率である0.2%を控除するため、「0.6%-(0.3%+0.2%)」となり、0.1%の増額にとどまったのです。

年金についても2019年度の計算結果を見ると、名目では上がったけれども、実質は下がっていると評価できそうです。

しかもマクロ経済スライドは、年金財政の均衡が保たれるまで発動されますから、当面は年金の実質的な価値が下がるという状況が、続いていくのかもしれません。

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最終更新:5/20(月) 18:00
マネーの達人

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