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『Observation』不可解なアクシデントが続く宇宙ステーションの支援AIとしてプレイする、SFスリラーアドベンチャー

5/21(火) 23:02配信

ファミ通.com

文:ミル☆吉村

「ヒューストン、聞こえますか? こちらオブザベーション搭乗のエマ・フィッシャー。応答願います。ジョシュ、エイルサ、誰か!」

 地球上空410キロ、国際宇宙ステーション“オブザベーション”の静まり返ったモジュール内に、ゆっくりと太陽光が差しこむ。その声に応える者は誰もいない。


 声の主がひと通り交信を試みた後、今度は「ぶーん」というかすかな低い音とともに、ゆっくりとあなたは起きだす。

「管理者アクセスを頂戴。ドクター・エマ・フィッシャー、140-412」

 再び聞こえた声が間違いなくフィッシャー博士のものであることを確認したあなたは、規定(プロトコル)通りに彼女に管理者アクセス権を発行する。


「サム、そこにいる?」「ここにいます」

 正式名Systems Administration & Maintenance、通称サム(SAM)。あなたは宇宙ステーション“オブザベーション”のシステムをコントロールするAIなのだ。


 スコットランドのインディースタジオNo Codeによるアドベンチャーゲーム『Observation』を紹介しよう。本作は海外でプレイステーション4/PCの英語版が本日より配信開始。追って、架け橋ゲームズによる日本語ローカライズ版の配信も予定されている。

 冒頭で紹介した流れの通り、プレイヤーは宇宙ステーションのAIとして、事態収拾のために奮闘する乗組員エマをサポートしていく。


謎解きはシンプルに、映像は雰囲気たっぷりに

 もちろんAIなので実体はなく、しかも当初はアクシデントの影響でほとんどのシステムがサムから切り離されてしまっており、ほとんど直接コントロールが効かない状態。そこで各モジュールに設置された固定カメラなどの映像を通じた遠隔アクセスでエマを助けていくことになる。


 実際どういうことをやるのか、一連の流れを説明していこう。例えば、序盤に多い“ロックされたモジュール間のドアを開けたい”といったケース。

 まずは固定カメラを切り替えながらモジュール内を探すと、アクセス可能なラップトップや関連する資料があるので、そこから情報を収集するのが第一歩。そして今度はロック機構の端末を探し、入手した解錠キーをセットすればオーケー、といった感じ。

 そんなに複雑な謎解きはなく、せいぜい壁の張り紙に気がつくかとか、ラップトップの電源も復活させなければいけないケースがあるぐらい。


 プレイが進むと船外活動もできる自律飛行可能な球体型のカメラに入れるようになったり、ドアのロック機構以外にもさまざまなシステムが出てくるようになるが、“カメラを通じて情報収集し、遠隔アクセスで謎解きをする”という基本はほぼ変わらない。

 そんな中で非常に素晴らしいのがアート面だ。ダイナミックレンジ不足で微妙に白飛びしているのを再現したカメラ映像は妙な生々しさがあって、しばしば実写に見えてくるほど。そして各システムのユーザーインターフェースの出来もよく、ちょっと昔のSF映画を思わせる“燃えるUI”で気分を高めてくれる。


 さて、本作は映画『ゼロ・グラビティ』のような、アクシデントからの地球帰還をテーマにした作品ではない。エマはシステム復旧と他の搭乗員捜索の過程で、次々と不可解な出来事に翻弄されていくことになる。

 察しのいい人なら過去に公開された映像や冒頭に書いたようなオープニングシーンを見ればなんとなく察しがついているかもしれないが、本作はとあるSF映画に多大な影響を受けたSFスリラー作品だ。

 ここから先、その作品への言及抜きには語れないので、一切のネタバレが駄目という人はここらで記事をそっと閉じて本作をプレイするかしないか検討して欲しい。


2019年宇宙の旅

 その作品とは、スタンリー・キューブリック監督によるSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』だ。つまりプレイヤーであるあなた=サムは、同映画に出てきたAIである“HAL”の役どころなのだ。


 オマージュの捧げ具合もなかなかすごい。実はオブザベーションが“地球上空410キロ”なんかではなく、なぜか土星上空に来てしまっていることが早々に判明するのだが、土星と言えば、アーサー・C・クラークによる『2001年宇宙の旅』小説版の目的地だ(映画版では木星)。


 そしてモノリスならぬ六角形の“何か”まで怪電波を発しながらエマとサムの前に登場するのだが、オブザベーションの中枢ユニットも六角形だし、到着したのも土星の北極付近にある六角形の嵐の上という塩梅(いずれもトレイラーに映っている)。

 どうもコレ、『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』などのキューブリック作品で六角形を重要なモチーフと見なすことがあるそうで、その流れで統一したモチーフとして仕込んでいるのだろう。


 ここまで来れば、エマに課せられた使命も自然と察せられることだろう。ここでそれが何なのか明かすのは野暮というものなので避けるが、つまりはそういうことだ。

 さて本作、もちろん単なるコピーに留まらずにSFスリラー寄りのユニークなひねりをいくつか効かせていて、ラストも元ネタとは少々異なる結論が採用されている。『2001年宇宙の旅』のレベルに達しているとは思わないが、よりディープなテーマを目指そうとした野望あふれる航海と言えるんじゃないだろうか。

最終更新:5/21(火) 23:02
ファミ通.com

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