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トヨタ社長が「終身雇用は難しい」と言っても、やっぱり「終身雇用」が必要な理由

5/21(火) 7:07配信

ITmedia ビジネスオンライン

 トヨタ自動車社長、豊田章男氏の「終身雇用は難しい」発言が大きな波紋を呼んでいます。

副業は「ご法度」だった日本企業

日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は13日、都内で開いた記者会見で終身雇用について「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、なかなか終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた」と述べた。

終身雇用、「企業にインセンティブ必要」 自工会会長 日本経済新聞 2019年5月13日

 日本を代表する大企業であり、かつ1950年の経営危機時に1600人のリストラを行って以来、半世紀以上もリストラせずに来たトヨタ自動車。その会長が、このような発言を行ったことを、筆者も非常に重みをもって受け止めています。

 主要自動車メーカー間競争の激化、中国など新興国の自動車メーカーの台頭、そして自動車もIT化が進み、GoogleやAppleといった異業種との主導権争いなど、トヨタ自動車を含め日本の自動車メーカーは厳しい環境に置かれています。

 それに伴い人材確保競争も激化している状況で、社内に抱える余剰人員を解雇し、優秀なエンジニアやデザイナーを高い報酬で迎え入れる……そんなメリハリのある人事戦略を取らなければグローバルで通用する人材を確保するのは難しいことは理解できます。

 その一方で、雇用の専門家である社労士の視点として、終身雇用の維持は「日本企業の責任ではないのか?」とも見えるわけです。

「就職」ではなく「就社」の文化

 第1に、これまで多くの日本企業が転職しても社外で通用するようなキャリアを形成できる働き方を社員にさせてこなかったことです。

 古くから日本の採用慣習は「新卒一括採用」でした。しかも「総合職300名募集」というような求人の仕方で、大学の何学部で何を学んできたのかもさほど重視されていません。

 法学部を出たから法務部に配属されるとか経済学部を出たから財務部に配属されるとか、といったこともなく、会社から辞令が出された職場に配属されます。「就職」よりも「就社」であり、配属されるまでどのような仕事をするのか分からないのが実情です。

 入社後も社内の複数の部署を転勤や配置換えにより経験し、ゼネラリストを目指すのが一般的なキャリアプランでした。社員も企業の意向に沿い、辞令1枚で全国へと転勤をいとわない働き方をしてきました。

 そのような働き方ができたのは、まさに「終身雇用」という不文律があったからです。「終身雇用」を前提に、社内人脈なども含め、定年まで勤め上げるためにキャリアを形成してきたのが従来の日本企業の社員でした。

 逆にいえば、新卒で入社した会社の外に出てしまったらそれまでのキャリアが消えてしまうリスクもあり、同等の条件で他社へ転職することも難しいことを意味します。

 欧米のように「経理のプロ」「人事のプロ」といった専門特化型のキャリアを形成する働き方であれば、どの企業に勤めるにしても原則として自分の客観的な労働市場における価値は変わりません。

 日本企業の社員は個人にひもづくスキルよりも、場合によっては私生活や自己の希望を犠牲にしても、会社の配属に従い、一社専属の「就社」を前提として働いてきました。そこから「終身雇用」のはしごを会社側が一方的に外すのは、やはり残酷ではないかということです。

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最終更新:5/21(火) 7:07
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