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なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか

5/21(火) 8:11配信

ITmedia ビジネスオンライン

 日産の業績が悪化している。

 2019年3月期の連結純利益は前期比57%減の3191億円、20年3月期も1700億円と10年ぶりの低水準に沈む見通しだというのだ。

【画像】あの企業も、この企業も「技術」をアピール

 この厳しい結果について西川廣人社長は、「昨年いきなり事件が起き、ルノーとの関係を含めて事業に集中できなかった」「(問題の)多くは元の体制から受け継いだ負の遺産だ」と釈明し、低迷もゴーン前会長のせいだと言わんばかりである。

 歴史は「勝者」がつくるものなので、西川氏が何をどう語ろうがそれはいいとしても、個人的には今回の惨状を招いたのは、「ゴーン体制」だけではないと考えている。日産を長く取材してきたジャーナリストの井上久男氏が指摘するように、日産は20年周期で権力闘争を繰り返してきた組織である。

 独裁者があらわれてクーデター、そこで権力を握った者もしばらくすると、側近から寝首をかかれるなんて感じで、足の引っ張り合いをする組織に構造改革などできるわけがない。つまり、今回の業績低迷の要因は、ゴーン体制以前から続く、日産の伝統ともいうべき「内向きな組織風土」にあるのだ。

 だからこそルノーと手を切って、新しい日産へと生まれ変わるのだと西川氏の肩を持つ方も多いが、残念ながらこの組織風土はゴーン追放後も1ミリたりとも変化していない。シビアな決算の3日後からオンエアされているCMがそれを雄弁に語っている。

 この秋からスカイラインに搭載される、世界初の運転支援システム「プロパイロット2.0」を扱ったこのCMでは、ブランドアンバサダーの矢沢永吉さんが手放し運転をしているのだが、問題はCMの最後に矢沢さんに言わせている、あの「キャッチコピー」だ。

 「ぶっちぎれ、技術の日産」

先進技術の日産グループ

 日産の業績は確かに悪いけれど、電気自動車や優れた自動運転技術があるのは事実なんだから別にそれくらい言わせてやれよと思うかもしれない。だが、実はこのコピー、そういう先端技術は関係ないのだ。

 ドラマ『西部警察』で大門さんが操るフェアレディZやスカイラインに胸を躍らせていた世代なら、1980年代の日産がCMでこのようにうたっていたことがうっすらと記憶に残っているはずだ。

 「先進技術の日産グループ」

 つまり、日産というのは「やっちゃえ」「ぶっちぎれ」と今っぽいイケイケ感を打ち出しているものの、実は30年以上前からアピールすることをほとんど変えていない、というコテコテの「昭和の企業」なのだ。

 「技術の日産」というスローガンがいかに前近代的かということは、GAFAを見ればよく分かる。これらの企業のCMや広告で、「技術のApple」とか「Amazonの技術は世界一」なんてキャッチコピーを目にしたことがないように、現代のテクノロジー企業は「技術自慢」などしない。世の中に訴えるべきは、テクノロジーの優位性ではなく、テクノロジーを用いて、この世界をどう変革していくのか、だと考えいているからだ。

 そのような先端テクノロジー企業と対照的に、いまだ「技術自慢」を継続する「昭和の企業」が業績低迷と聞いても、申し訳ないが妙に説得力があるのだ。というと、「変わらぬ技術力があるということだろ! それをうたって何が悪い!」と怒りのあまり発狂する日産ファンも多いだろうが、「技術」が悪いと言っているわけではない。「技術自慢」を長く続けることが、「悪い」と申し上げているのだ。

 なぜかというと、「技術の」という枕詞がつくような企業や、「ウチの技術は世界一」と何十年ものけぞっている組織ほど、ガバナンスが崩壊して破滅の道へ突き進みがち、という「不都合な真実」があるからだ。

 その代表的なケースが、東芝である。

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最終更新:5/21(火) 8:11
ITmedia ビジネスオンライン

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