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なぜ日産は「技術」をアピールして、「ぶっ壊せ」と言えないのか

5/21(火) 8:11配信

ITmedia ビジネスオンライン

帳尻合わせ

 そこでどうするのかというと、「帳尻合わせ」である。「技術」を守るためには、多少のインチキやルール無視もいたしかたなし、というモラルハザートが広がり、そこに異を唱えることさえも許さない「同調圧力」もまん延する。これが昨今続く、データ不正や改ざんの本質である。

 実際、IHIの不正で、第三者検証委員会が調査をしたところ、工場内では「おかしなことをおかしいと指摘する」「できないことをできないと言う」のが困難だったという証言が寄せられている。

 だが、このような「同調圧力」が当たり前になった組織が本当に恐ろしいのは、「内向き」になりすぎて、もはや誰のために「ものづくり」をしているのかさえも分からなくなるほど、自分を見失ってしまうことにある。

 今の東芝が、まさにその真っ只中である。

 約1000人の早期退職を含め、連結従業員の5%に相当する7000人規模の人員削減にも踏み切るこの会社は、復活のためにと昨年、「東芝Nextプラン」なるものをぶちまけた。そこには、「世界有数のCPSテクノロジー企業を目指す」とこの期に及んで、まだ「技術」に固執していることにも驚くが、それよりも衝撃的なのは、資料の冒頭で以下のようなスローガンがデカデカと掲げられていたことだ。

 「2人の創業者のベンチャースピリッツを蘇らせる」

 日本では、山で道に迷った時にとにかくスタート地点に戻れみたいなノリで、「原点回帰」をすれば何事もうまくいくとされているが、こういうビジョンを掲げる世界的企業はほとんどいない。苦しくなると創業者を引っ張り出すのは、戦争に負けそうになると「神風」とか騒ぎ出すように、自分を見失った者が最後にすがる「精神論」だからだ。

技術の日産を、ぶっ壊せ

 そんな精神論を掲げる東芝と、同じにおいが日産からも漂い始めている。

 先日の決算会見で、西川社長は「『技術の日産』というDNAは健在だ」などと「技術自慢」を繰り返した。これがどういう結末を招くかは、これまで見てきた通りだ。そして、さらに危ういのは、「3年で元の日産に戻す」と高らかに宣言をしたことだ。

 顧客の嗜好や社会のニーズがこれだけ劇的に変わっていく中で、自動車会社が生き残るには、これまでとまったく異なる新しい姿へと変わっていくしかないのは明白だ。にもかかわらず、3年かけて「原点回帰」するという。残念ながら東芝同様、「自分」を見失っているとしか思えない。

 今、日産が掲げるべきキャッチコピーは、「ぶっちぎれ、技術の日産」などではなく、「技術の日産」を「ぶっ壊せ」ではないのか。

(窪田順生)

ITmedia ビジネスオンライン

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最終更新:5/21(火) 8:11
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