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「母の気持ちで考えた」殺人事件の法廷で… 今も消えない裁判員制度への疑問

5/21(火) 10:55配信

沖縄タイムス

裁判員制度10年

 刑事裁判に国民が参加する裁判員裁判の制度導入から21日で10年の節目を迎えた。同制度は今後、どうあるべきか。「裁判が分かりやすくなった」という評価の一方、「裁判員による量刑判断は重圧」との指摘もある。裁判員経験者、裁判官、検察官、弁護士に課題や展望などを聞いた。(社会部・下里潤)

 ■男女比

 2018年10月、那覇地裁。実兄を包丁で刺し殺人罪に問われた20代男性被告の裁判員裁判で、裁判員は6人中女性1人だった。判決後、本紙の取材に応じた50代女性=会社員=は「男女の目線は違う。事案によっては同数にする方がより公平では」と振り返った。

 被告は、複雑な家庭環境で育ち、軽度の知的障がいがあった。障がいに対する周囲の理解はなく、いじめられ、引きこもるようになった。兄に怒られたことがきっかけで過敏に反応するようになり犯行に及んだ。

 女性は「どうして犯罪を止められなかったのか」と被告の母親の気持ちになって考えた。おなかを痛めて産んだ兄弟間で起こった事件。「被告に手を差し伸べる人はいなかったのか」。胸が締め付けられた。

 被告のことを考えれば考えるほど心配は尽きなかった。刑期を終えた被告を温かく受け入れてくれる場所はあるのか。知的障がいに対する社会の理解は進んでいるのか。被告の人生を案じ、何年の刑を科すのが妥当か迷った。

 ■判例提示

 そんな時、裁判官が提示したのが過去の判例だった。全国の同じような事例が紹介され、量刑傾向の幅が示されていた。

 「既に答えが出ているのと同じでは」と女性は言う。法律を知らない人が判断しやすいよう工夫してくれたのは理解できる。ただ、裁判員裁判は一般国民の感覚を司法に取り入れることが趣旨のはずだ。女性は「判例が示されると率直な意見が言いにくくなると思う。国民の声は本当に反映されているのか」と首をかしげる。

 裁判が終わった今も、刑を決めたことに対する重圧は消えない。女性は「司法への理解を深めさせたいならば、国民に刑の重さまで決めさせないでほしい。自由な発想で意見を述べるにとどめ、最終的に法律のプロが判断する形が理想だ」と語った。

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最終更新:5/21(火) 12:50
沖縄タイムス

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