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映画『轢き逃げ ー最高の最悪な日ー』ヒロイン役・小林涼子「20代の最後にこの作品に出会えたことは大きいです」

5/22(水) 6:00配信

デビュー

 現在公開中の水谷豊監督作品第2作となる映画『轢き逃げ ー最高の最悪な日ー』に出演中の女優・小林涼子。轢き逃げ事件を引き起こしてしまう青年・宗方秀一(中山麻聖)の婚約者・白河早苗役として、幸せの頂点の花嫁から加害者の妻という最悪の状況までを、映画の中で生きることとなる。20代最後の年、「小林涼子の人生として大きな出会い」と呼べるこの作品について、そして今が“再デビュー”という女優の仕事への想いについて聞いた。

【写真】『轢き逃げ ー最高の最悪な日ー』ヒロイン・小林涼子

■小林涼子インタビュー/「濃密な時間を先輩方と過ごせて勉強になりました」

――今作で、白河早苗役を受けたときの感想は?

「大手建設会社の副社長の娘ということで、私は庶民の娘ですから“お、お、お…お嬢様だぁ”みたいな気持ちにはなりましたね。脚本を読み終わってから、監督も脚本もあの水谷さんなんだということが自分の中でようやく一致してきて、役者さんが監督をする現場というのはどういうものだろう?っていう、ときめきも不安もありました。早苗は『最高で最悪な日』を迎えるという、変化の大きな役で、実際こんなに大きな役をいただけたことが信じられなくて。撮影前にマネージャーさんに“嘘じゃないですか?”って何度も確認したんですが(笑)、こんなに朗らかで楽しくていいのかなっていうぐらい恵まれた現場でした」

――早苗を演じるうえで大切にしたことは?

「お嬢様というと、鼻持ちならないタイプのお嬢様もいますけど、監督からは“そうはならないでほしい”と言っていただいていました。できるだけチャーミングでユーモアがあって、帰国子女のようなちょっと天真爛漫なところもあって、豊かな人間性であってほしいと。結婚という最高の日までは、特に意識して丁寧にやらせていただきました」

――映画を観ている側は事件が起きたことを知っているので、結婚式までのパートの何も知らない早苗の表情が幸せなほど、本当に切なく感じられます。

「そこまでは彼女の笑顔が見られる部分でもあるので、とにかく綺麗に、楽しく。秀一とのディナーの席では、監督から突然“オペラを歌ってくれ”という演出があったので、楽しくオペラを歌わせてもらったり。本当にこだわった素敵なドレスを着させていただきました」

――秀一と輝が逮捕された後は、全てが一変してしまいます。

「それ以降は、悲しいという以上に、戸惑い、知らないことの不安という部分を大切にしました。彼(秀一)から事件のことを聞くシーンというのは無くて、(観ている)皆さんが知っているのに早苗ちゃんは知らないっていうことがとても多いので。だからほかの現場とはちょっと距離を置きました。たくさんの先輩がいらっしゃるので、演技を見ていたい気持ちもあるけれど、本当は早苗ちゃんが知らないという部分はあまり見ないようにして。影響されやすいほうなので、知っている安心感が出てしまったら、それは違うかなと思って。全体像が分からないことによる不安や怖さが一番大きいでしょうし、事実が受け入れられないという気持ちもあると思います」

――撮影現場では、水谷監督が実際に演じて見せるという演出があったようですね。

「なかなかそんな現場はないですよね。いくら仲が良くても、女優さん、俳優さん同士はなかなか手の内を明かしてもらえないものですし、技は見て盗むものですから。それを手取り足取り、しっかりと演じて見せてくださって。特に男性陣の場合は同性ですから、水谷さんも瞬間の本気の演技を見せてくださるので、ちょっと“うらやましいな、男子”って思ってました(笑)。それでもフッとこちらを向かれたときには、“早苗はこういう顔をしていてほしい”という表情をしてくださって。監督が目の前で一人二役をやっているんですよ! それが本当に贅沢で、勉強になりました」

――そんな水谷演出のなかから盗めたことはありましたか?

「監督は特に手の細かい使い方にこだわってらっしゃいました。接見室の場面で、秀一と早苗の間を隔てているガラスに手を置く。対面している空間には一緒の空気が流れているはずだけど、ここにガラスがあるというのが凄く切ない。ガラス1枚が大きな壁になっているというのを、手を置くことによって、ここから先に行けないというのが伝わるからあったほうがいいとか。檀ふみさんとのお芝居で、こらえきれずにグッと横を向くときも、手の位置は下じゃなくて胸の上のほうがいいとか。全身を細やかに使ってお芝居をするということを教えていただきました。俳優として気持ちの面も見てくださいますし、監督として見え方の面でも見てくださるので、総合的に教えていただける、本当に素晴らしい先生でした」

――作品のテーマは重いですが、現場はピリピリすることもなく?

「超朗らかでした(笑)、珍しいぐらい誰も怒鳴らず。緊張感のあるシーンでも、スタッフさんたちはいい感じにリラックスされていて。“何回でもやってあげるよ”っていう空気感もあるので、私たちは余計なプレッシャーを感じることなく、演技に集中することができました。監督の差し入れの神戸牛もめっちゃ美味しかったですし。現場で鉄板で焼いてるんですよ(笑)! 神戸にいるとはいえ、皆さん遊びに行く時間もないし、毎日撮影が続けばしんどくもなってきますので、監督の神戸牛にはスタッフ一同上がりました。現場での居方、皆さんとのコミュニケーションとの取り方など、今までこんなにも濃密な時間を先輩方と過ごしたことがあまりなかったので、そういう意味でもものすごく勉強になりました」

――毎熊克哉さんとのシーンにはユーモラスな部分もあって。

「確かに悲しいことがあったからって、人間って毎日悲しい顔をして生きているわけではないですし。周りの人たちも全員がお葬式みたいな顔をしているわけではないじゃないですか。それが普通でも、ドラマにするうえで、テイストを合わせるためにみんな悲しい顔一色になりがち。いろんな人がいて、いろんな瞬間があって、でも心の中を占めている大きなものは一つで…というのはすごくナチュラルですよね。役者さんとしていろんな人間を見て、演じてらっしゃるから、人間一人ひとりがみんな豊かだなって思います。それぞれの人間が生きてます」

――早苗の変化が感じられるのも、生きた人間が描かれているからですね。

「登場するシーンは、時間的にちょっと飛んでいる部分もあるんですが、その間に何をしていたのかというのを埋める作業をしていました。結婚する前にどういうところでデートをしていたのかなとか、逮捕の後、お父さんとお母さんとどんな会話をしたのかなとか。この瞬間、この人と会っている以外の時間があって、それによってどういう気持ちで今日ここにいるのかっていう部分は考えるようにしましたね。キャラクターがそれぞれの時間をどう過ごしているというのは、とてもこだわられている点かなと思いましたので」

――映画は謎解き要素やサスペンス要素もありますが、真実に近づいたから終わりではなくて、そこからのことが大事に描かれています。

「解決はしないということが、本当にリアルだなと。赦すことも出来ないし、でも赦されないから終わりでもなくて。白黒がつけられず、いずれどうなるのかっていう部分もしっかりと組まれている脚本で。彼らがこのあとどうやって生きていくのかなっていうのは観終わったあと、考えたりもしましたね」

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最終更新:5/23(木) 2:20
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