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養蚕、障害者就労紡ぐ 下呂市の企業、福祉法人と共同事業

5/22(水) 9:09配信

岐阜新聞Web

 岐阜県下呂市森の産業廃棄物処理会社「マテリアル東海」は、グループ会社の社会福祉法人「さくらの花」(同市野尻)などと共同で大規模な養蚕事業を始める。障害者の就労支援と雇用の拡大、地域活性化が目的。戦後、農家の副業として、県内でも盛んだった養蚕は衰退して久しいが、令和の新時代にあえて挑む。

 連休明けの今月上旬、中津川市境に近い下呂市御厩野の山の裾野に広がる2千平方メートルの畑に、農作物生産などを行うマテリアル東海のグループ会社の社員や、さくらの花が運営する二つの就労支援事業所の利用者らが、桑の苗木約1400本を植えた。作業には県蚕糸協会(美濃加茂市)の役員も参加し、指導に当たった。

 マテリアル東海はグループ会社を通じて、住民から2ヘクタールの農地を借り、数年かけてカイコの餌となる桑を植栽する。6月にはカイコ1万匹を仕入れ、近くにある同社の倉庫で飼育を始める。

 同社の丁大介常務(29)は「昔、この地域でも盛んだった養蚕に興味があった。養蚕業は障害者らの雇用の拡大につながる。伝統の産業を令和の時代に復活させたい」と事業の目的を話す。5、6年後には飼育数は60万匹になる見込みで、約1・2トンの繭を滋賀県の製糸業者に出荷する予定。同社で生糸や工芸品などとして販売する計画もある。

 業務が拡大するにつれ、カイコの飼育や桑畑の管理のほか、生糸の製造などで人手が必要になる。現在、2事業所には利用者17人が在籍。就労能力の向上を目指し、市内の企業や病院などに赴いて働いており、今後、養蚕業にも携わる。さくらの花の松下香織理事(32)は「一つの仕事だけでなく、可能性を広げるためにいろいろな業務に挑戦し、経験することが大事。その中で利用者には個々の特性に合った仕事を見つけてもらう」と話す。

 普段は病院清掃などの仕事に就き、今回苗木を植えた女性利用者(21)は「畑での作業は初めてだが勉強になった。カイコは見たことがないけど、育てるのが楽しみ」と笑顔で話した。

 県蚕糸協会によると、養蚕を行う農家は1949年に県内で4万172戸あったが現在は10戸・グループ。県などの調べでは、下呂市内では2004年には4戸あったが13年からゼロになった。養蚕が衰退したのは中国から安価な絹糸が輸入されたのも要因という。

 丁常務は「生糸を将来、下呂の特産品にしたい」と意気込み、同協会は「和楽器の弦などに使われる絹糸は需要がある。岐阜県はかつて繭の生産量が東海北陸地方で最多だった。再び良質の物を送り出してほしい」と期待した。

岐阜新聞社

最終更新:5/22(水) 9:09
岐阜新聞Web

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