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「どんなときも。」で見せたアーティスト・槇原敬之の本質を丁寧に作品へと映させた『君は誰と幸せなあくびをしますか。』

5/22(水) 19:02配信

OKMusic

「どんなときも。」のヒット、実は異例!?

この「どんなときも。」は槇原敬之最大のヒット作であり、自身初のチャート1位楽曲かつ初のミリオン作である。こうして歌詞をまじまじと考察していると、“当時はこういうタイプの歌詞が支持される要因が何かあったんだっけな?”との思いも首をもたげてきた。そこで、同曲が発表された1991年の年間シングルチャートも調べてみた。1位が小田和正「Oh! Yeah!/ラブ・ストーリーは突然に」で、2位CHAGE&ASKA「SAY YES」、3位 KAN「愛は勝つ」。「どんなときも。」はそれらに次ぐ4位で、以下、5位 ASKA「はじまりはいつも雨」、6位小泉今日子「あなたに会えてよかった」、7位B'z「LADY NAVIGATION」、8位長渕剛「しゃぼん玉」、9位DREAMS COME TRUE「Eyes to me/彼は友達」、10位B'z「ALONE」と、見事にラブソングが並んでいる。「愛は勝つ」もわりと概念的な歌詞だが、《Carry on carry out/傷つけ傷ついて愛する切なさに/すこしつかれても Oh もう一度夢見よう/愛されるよろこびを知っているのなら》とあるから、ラブソング寄りであろうし、8位の「しゃぼん玉」にしても、《ほんの一瞬でも お前を愛せてよかった/枯れ果ててしまっても 温もりだけは残ったよ》とのフレーズが見出せる。やはりいつの時代も流行歌の基本は恋愛であることが分かるし、そう考えると「どんなときも。」のヒットはこの時期においてはやや特異なことであったと言えるかもしれない。

まぁ、とはいえ、ラブソングでなくても、年間チャート上位のヒット曲となることがないわけではない。図らずも「どんなときも。」発表の前年である1990年の年間1位はB.B.クィーンズ「おどるポンポコリン」だし、同年の4位はたま「さよなら人類/らんちう」だったりする。しかしながら、前者はテレビアニメ『ちびまる子ちゃん』、後者は“イカ天”ブームがヒットの要因であることは間違いなく、それが楽曲そのものの良さを強力に後押しした格好だった。その点で言えば、「どんなときも。」にも何かタイアップがあったのかと調べてみたら、金子修介監督による織田裕二主演映画『就職戦線異状なし』主題歌だったとある。筆者はその映画を観たのことがないので作品の良し悪しに関しては何とも言えないが、邦画の歴代興行収入の上位にランクインされている作品ではないし、熱量の多いファンを擁したカルトムービーである…というような話を聞いたことがないので、『就職戦線異状なし』が「どんなときも。」のセールスを後押ししたとは考えづらい。また、複数の企業がCMソングに起用しているが、それはのちの話。いずれも2000年以降のことである。つまり、「どんなときも。」のヒットはほぼタイアップとは無縁と言っていいのである。これは相当にすごいことである。

「どんなときも。」は槇原敬之自身初のチャート1位獲得楽曲であるばかりか、初めてチャートインしたシングルである(それ以前に発表したシングル2作はいずれも100位以下)。それをいきなり1位に叩き込んでいる。しかも、1位となったのは発売から約1カ月半後。ロングセラーを記録して、翌年1992年に選抜高等学校野球大会の入場行進曲にもなっている。冷静に考えたら偉業に近いことではないかとすら思う。この頃、他に聴くべき曲がなかったかと言えばもちろんそんなことなく、前述の通り、他にもヒット曲は多々あった。そんな中で、ほぼノンタイアップの楽曲がヒットしたというのは、これはもう楽曲のポテンシャルが相当に高かったことに他ならないと思う(それ以外に何か要因があって、それを知っている人がいたらぜひ教えてほしいほどだ)。

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最終更新:5/22(水) 19:02
OKMusic

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