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改札を抜ければどこへでも行ける 地下鉄の駅ですれ違う人を描く漫画に感情がこみ上げる

5/23(木) 19:30配信

ねとらぼ

 東京の地下鉄の駅構内にある沖縄物産店を軸に、さまざまな人のドラマがすれ違う漫画「地下鉄に花と島唄」がぐっとくると好評を博しています。作者は鷹行静さん。

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 流れる島唄とハイビスカス。「私が改札に飛び込んで消えたら、どうぞ花を手向けてください」という印象的なフレーズで始まる物語。最初に登場するのは漫画家を諦めて就職活動中の男性。物産店で働く女性を見て、つい彼女を主役にした漫画のストーリーを考え始めてしまいます。物語を描くことを自ら捨てようとしているのに、それでも空想のキャラクターが閉塞を打破する場面を思い描いてしまうのです。

 次に登場するのは不倫相手と待ち合わせする女性。遅れているのに連絡もよこさない相手を待ちながら、沖縄物産店を見て、不倫相手との沖縄旅行を思い出します。青い海と白い砂浜と子どものようにはしゃぐ彼。「こんなに胸が苦しくなるようなことがあるんだって思ったのに」、今の自分は「出口の見えない地下通路」のよう。

 そして物語は物産店で働く女性の視点へ。絶え間ない人の流れを眺めながら、自分だけ行き場がないような気持ちになるという彼女。「向こう側に青く光る海があって、自分だけがそこから遠く切り離されているような」気持ちをつづります。そんな彼女が外国から来た少年と出会ったことをきっかけに、地下鉄の改札が海の向こうへもつながっていることに気づきます。改札を抜けて電車に乗って乗り換えたら空港も沖縄もその先も、どこへも行ける、と。

 なぜかよくわからないまま、彼女は出発する少年を追いかけます。「まるで、一列に並んだ改札が一気に開いたみたいに」自分をせき止めていた何かが開いたような気がしたから。働きながら漫画を続けようと決めたあの男性と、待ち合わせをやめて歩き出したあの女性の脇を通り抜けて彼女は走ります。少年に渡したいものがあるから――。

 地下鉄の駅で、3人の物語が交わるわけではなく、すれ違いながらも巧みに収束していく展開が秀逸です。「閉じた改札」のように行き詰まった現状から、それぞれが一歩を踏み出す結末が胸に響きます。

 読者からは「全て見た後言葉に出来ないとっても素敵な感情で心が埋め尽くされた気がしました」「なんで泣いちゃうのか分からないけど、でもなんか、心に滑り込んでくるものが確かにあって、好きです」と言葉に出来ない感情がこみ上げてくるという声も寄せられています。

 「地下鉄に花と島唄」は、鷹行さんが2015年にコミティアで発行した同人誌に掲載されたお話。鷹行さんの作品はTwitterやpixivで読むことができます。


画像提供:鷹行静さん

ねとらぼ

最終更新:5/23(木) 19:30
ねとらぼ

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