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人生100年時代、長寿の米国人が語る現実

5/23(木) 13:37配信

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 あなたは100歳まで生きたいですか?

 「もちろん」と、92歳のベティー・ドノバンさんは話す。姉のアンナマリー・ドノバンさんは108歳で健康だ。アンナマリーさんは100歳の時に初めて「iPad(アイパッド)」を手に入れた。姉妹の夫は兄弟同士だったが既に他界し、姉妹は介護施設で一緒に暮らしている。

 ベティーさんの娘、アニー・ドノバンさん(54)の答えは「ノー」だった。母と伯母は互いにそばにいて2人とも元気だが、それほど幸運なケースばかりではない。これくらいの年齢の人はたいてい、愛する人に先立たれていたり、体が悪かったりする。

 米国では100歳まで生きる人が増加している。かつては珍しかったが、国勢調査によると、100歳以上人口は2002年の約5万人から8万2000人に増えた。2030年には14万人程度に達する見通しだ。研究者たちは私たちがもっと長く生きられると考えている。米国の平均寿命は男性が76歳、女性が81歳だが、人間の寿命の限界は、フランスのジャンヌ・カルマンさんが1997年に死去した時の年齢とされる122歳との見方が一般的だ。

 人は健康な超高齢者に会うと、その秘訣(ひけつ)を探ろうとして食生活や運動習慣について尋ねる。だが、そこまで長生きしたいと考えている人は多くない。世論調査会社のハリス・ポールがフェニックス大学の依頼で2018年に行った調査では、米国の成人の59%が、100歳まで生きることにはリスクが多すぎるため、価値を見いだせないと答えている。100歳まで生きたい人には前提がある。70%強の人は、100歳に見えないのなら100歳まで生きたいと答えた。

 寿命が延びるにつれ、一部疾患の発症確率も高まる。アルツハイマー協会によると、アルツハイマーや他の認知症を患っている人は2010年の470万人から23%増加し、19年には580万人に達した。

 問題は、長生きに伴う身体・精神的制約と、やしゃごを見られるとか医療や技術の爆発的進化に立ち会うといったメリットが釣り合うかどうかだ。85歳や90歳で十分だと感じている人もいる。100歳を目指す人が、長生きしている友人を認知症施設に訪ねて考えを変えることもある。

 サリー・ジャミーソンさんのように元気づけられる例もある。1月に100歳を迎え、6つのパーティーで節目を祝ったジャミーソンさんは、最近までオハイオ州クリーブランドのボランティア団体に所属し、介護施設を訪問したり、高齢者の誕生日に電話をかけたりしていた。

 30年間のボランティア生活の前には、夫が経営するメーカーの副社長兼会計係をしていた。頭は今もしっかりしており、数字などの記憶も確かだ。生まれて初めて持った昔の電話番号も覚えている。

 2人の娘は州外に住んでおり、1カ月交代で母親と一緒に過ごす。フロリダ州に住む娘のバーバラ・ウォルターさん(72)は、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)が母親ほど高ければ、100歳まで生きたいと思っている。ただ、「そうでない人がたくさんいる」と話す。母親が子供や孫やひ孫に記憶を伝えることは重要だと考えている。逆に子供や孫たちは、世話をしたり寄り添ったりと、ジャミーソンさんにしてあげられることが多い。「合わせて考えると、双方にとって有益だ」とウォルターさんは言う。ジャミーソンさんは最近、呼吸の問題のためボランティア活動をやめた。

 ペンシルベニア大学の副学長を務める腫瘍学者で生命倫理学者のエゼキエル・エマニュエルさん(61)は、75歳まで生きれば満足だと話す。それまでには自身の最も重要な貢献を終え、子供は成長し、孫が生まれているだろうという。75歳の誕生日を過ぎたら、インフルエンザの予防接種を受けず、抗生物質をとらず、がんやストレスの検査も受けない。もっと長生きすれば、それはそれで構わないと話す。ただ、延命のための特別な医療処置を受けるつもりはない。

 ボストン医学センターの老年病学者トム・パールズ博士が1995年に100歳以上の人の追跡を始めた時、その割合は1万人に1人だった。現在は5000人に1人と「2倍になった」。100歳まで生きる人の多くはストレスにうまく対処し、楽観的で外交的、誠実で感じが良いという。

 108歳のアイザック・“アイク”・ニューカマーさんもその1人だ。妻と死別したニューカマーさんは社交的な性格で、住んでいるフロリダ州の高齢者向け複合施設で多くの人に慕われている。任天堂の「Wii U(ウィーユー)」でボーリングのゲームをし、朝は散歩をする。

 ニューカマーさんは処方薬を1種類と市販の塩の錠剤を4錠しか服用していない。「これほど長く生きてきてよかったのは、人について少し多く学んだことかな。いかに人がそれぞれ違うかということ」。一方、「悪い面は動き回るのが年々難しくなること。痛みはない。ただ年をとって歩くのが大変なだけ。だが人生を楽しんでおり、常に明るい側面を見ている」と話す。

By Clare Ansberry

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