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フィクションとドキュメンタリーのハイブリッドで加速する『アメリカン・アニマルズ』の面白さとは

5/24(金) 12:00配信

CINEMORE

劇映画+ドキュメンタリー

 本作における際立った特徴はそれだけではない。実際に事件に関わった人物たちが登場し、当時のことを語るという場面が差し挟まれるという点も興味深い。つまり、急に劇映画からドキュメンタリー映画になってしまう場面がいくつもあるのだ。これはバート・レイトン監督がドキュメンタリー作品を手がけてきたということが関係している。初めて挑戦する劇映画において、自分のストロング・ポイントを発揮し、新しい視点、ドラマの描き方を模索した結果であるだろう。

 バート・レイトン監督の初の劇場作品となった前作、“The Imposter”(12)は、ドキュメンタリー作品でありながら、まるで劇映画かと思うような、凝った再現ドラマ部分があった。今回は逆に、劇映画のなかにドキュメンタリー部分を挿入している。とはいえ、筆者がこの点について監督に直接質問した際、レイトン監督は、近いように見えてもドキュメンタリーと劇映画は作られるプロセスが基本的に異なっていると説明した。

 本作はドラマ部分のなかにおいても、実際に事件に関わった人物を出演させ、本人の役で演技をさせているシーンがある。事件から十数年の時が過ぎて青春の輝きから取り残されたような、その寂しげな姿は、真実の姿なのかドラマ上での演技なのかが、溶け合うように融合しているように感じられ、混乱をきたしてしまう。だが監督が説明する通り、あくまでこれは作られた演出である。

 しかし、それが作られたものだからこそ、そこにはある種の真実が宿る場合もある。監督が取材によってつかんだ“真実”を表現するためには、フィクションとして演出した方が、事件のいきさつや心理を、より象徴的に、効果的に観客へ伝えることができる。本作はドキュメンタリー部分を加えることによって、フィクションの面白さや価値が、逆に存在感を得ることになったのである。

 ここまで多くのアイディアが詰まっていて、さらにそれぞれが絡み合っている複雑な構成の作品も珍しい。それは、本作が監督の初めての劇映画だということが関係しているように思える。

 多くの監督は、最初の作品において自分のイマジネーションやアイディアをつめこみたいと思うもので、経験の無さから、それらがうまく結びつかずアイディア倒れになってしまうケースも少なくない。しかし、レイトン監督は劇場作品以外でもドキュメンタリーを撮ってきた人物である。その経験と作品に対する強い情熱が、巧さと熱さを併せ持つ奇跡的な映画に仕上げることができた理由なのではないだろうか。


文: 小野寺系
映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。
Twitter: @kmovie


『アメリカン・アニマルズ』
5月17日(金)より新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
(c)AI Film LLC/Channel Four Television Corporation/American Animal Pictures Limited 2018

小野寺系

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最終更新:5/24(金) 12:01
CINEMORE

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