ここから本文です

「免疫を利用してがん治療に立ち向かう」 ―がんとの共存目指して

5/24(金) 17:47配信

サイエンスポータル

 ノーベル・プライズ・ダイアログ東京2019「科学が拓く明るい長寿社会」(3月17日)で本庶佑(ほんじょ たすく)氏

がん治療のパラダイムシフトを起こす

 私たちは1992年に「PD-1」(T細胞と呼ばれる免疫細胞の表面にある分子)を特定しました。その後の研究で、PD-1は免疫システム(が過剰に働く際)のブレーキ(抑制)の機能を持ち、これが欠損している動物は(抑制が効かないので正常な細胞も攻撃してしまい、その結果)さまざまな疾病にかかるということが分かりました。(一方でがん細胞はこの抑制機能をうまく利用してがん細胞自身を攻撃しないようにしているので、)この発見を基にPD-1をがんの治療に使えないかと考え始めました。

 企業と(ヒト型の)医薬品を共同開発した結果、(免疫療法の)ニボルマブ(抗ヒトPD-1モノクローナル抗体医薬品)は、典型的な化学療法として使われているダカルバジン(抗がん剤)と比べてメラノーマ(悪性黒色腫)の患者に対して明確な(治療効果上の)違いを示しました。その後、アメリカ食品医薬品局(FDA)、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)など、(ニボルマブは)世界中で12を超えるがんの免疫療法の医薬品として承認されております。

 これはまさにがん治療のパラダイムシフトを起こすと考えられています。それは健康な細胞に対する影響が理論上はないために副作用が少ないこと、さまざまな種類のがんに効くこと、その治療をやめても長期にわたって有効であることが理由です。(抗PD-1抗体による)治療が有効だった患者さんは治療をやめた後も再発しませんでした。その患者さんは5年以上の生存が記録されています。(この治療法は)なぜこれほど有効なのでしょうか?

将来はがんとの共存ができるようになるかもしれない

 がん細胞は常に変異しています。化学療法の場合、薬剤に対する抵抗力(薬剤耐性)を持つようになり、薬が効きにくくなります。しかし私たちは獲得免疫(感染した病原体を記憶することができ、次にその病原体に出会うと排除しようとする免疫)を持っています。ですから理論上は変異したがん細胞を(たとえ変異しても獲得免疫が病原体として記憶し認識することができるので)すべて特定できます。

1/2ページ

最終更新:5/24(金) 17:47
サイエンスポータル

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事