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優し過ぎる守護神・若原智哉が踏み出した第一歩。U-20W杯初戦、PKストップの裏に

5/24(金) 17:46配信

GOAL

U-20ワールドカップ2019がポーランドで開幕した。現地時間23日(日本時間24日未明)、初戦に臨んだ日本は、南米王者エクアドルと1-1で引き分けた。オウンゴールから先制され、PKを献上。崩れそうなチームに勇気をもたらしたのは背番号1の守護神だった。【取材・文=川端暁彦】

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試合前、大迫敬介と連絡を取る

 殊勲者の一人は、後半開始早々のPKのピンチをGK若原智哉(京都サンガF.C.)である。実はこの試合の直前、若原はA代表入りした同い年の守護神・大迫敬介(サンフレッチェ広島)と連絡を取っていた。

 話は少し昔にさかのぼる。現U-20日本代表が立ち上がって最初の遠征先はスペインだった。国際ユース大会『コパ・デル・アトランティコ』に参加したチームのGKは大迫と若原の二人である。世代を代表すると誰もが認めていた二人は、U-17以下の年代でも正GKの座を争っていた。

 とはいえ、両選手とも少々おっとりしたところのあるタイプなので、かつての川口能活と楢崎正剛のようにピッチ外でもバチバチなんてことはなく、仲も良かった。この大会、カナリア諸島との第1戦には大迫が先発し、ベルギーとの第2戦には若原が先発。若原はベルギー戦で素晴らしいプレーを見せて強国を完封してみせる。このため、「最後のスペイン戦も若原でいこうか」という雰囲気もあったという。

だが、翌日のトレーニングでの中で若原は、第3戦の先発が大迫だろうと勝手に思い込んでいるような様子を見せてしまい、先発から外されることとなった。結局、大迫先発の日本は見事にスペインに完封勝利。大迫はその評価をさらに高めることとなった。

悲壮感すら感じる口ぶりで…

 若原についての評価を指導者に聞くと、持って生まれたセンスやセービング能力を高く評価する声がきこえる一方で、「いいヤツだけれど、優し過ぎるかもしれない」といったキャラクターの部分を心配する声も多かった。京都U-18の3年生になったとき、岸本浩右監督(当時)がキャプテンマークを託したのも、そうした部分での成長を願ってのことだった。GKは味方に対して厳しい言葉もかけなければいけないし、一つしかないポジションを争う以上、ある種の図太さや図々しさのような性格面での「強さ」も求められるからだ。

 主将として過ごした京都U-18の3年次は成績面でも結果を残して充実した時間を過ごし、卒業後も高卒1年目ですぐに出場機会を得るなど順風満帆に見えた。ただ、ポジションを失ってから、プロとしての本当の戦いが待っていた。

代表チームでも年下の谷晃生(ガンバ大阪)が新たに台頭し、大迫も五輪代表へピックアップされるなど少し差が生まれつつあった。昨年のAFC U-19選手権では第3GKとしての帯同。苦しい時間を過ごした末に、メンバーをほぼ総入れ替えした準決勝で出番を与えられたが、相手のクロス気味のシュートを防いだ際にゴールに入れてしまい、「自分のミスのせいで負けてしまった」という屈辱的な結末を迎えることとなってしまった。

 今年に入ってからも京都での出場機会は得られず。アジアの準決勝で味わった嫌な感覚を払しょくする機会もないままトレーニングに励む日々が続いた。代表での序列も変わらず、「選ばれるか不安だった」とまで言う。だが、谷が負傷離脱、大迫はA代表へと招集される中で、若原が正GKを任されるのは必然的な流れだった。

「チームで活躍できていない中でも選んでいただいたので、ここで結果を残さないといけない」

 その語り口からは悲壮感すら感じてしまい、話を聞いていた自分ともう一人の記者が思わず「いや、絶対やれるぞ。大丈夫だ」などと励ましてしまったほどである。とはいえ、長く公式戦から離れた状態でいきなり世界大会の初戦を迎えるのだから、緊張するなと言うほうが無理な話でもある。実際、試合後には「緊張でやばかった」と正直に吐露してくれた。

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最終更新:5/24(金) 17:48
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