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西島秀俊が語る、『空母いぶき』と「きのう何食べた?」の共通点とは?

5/24(金) 6:30配信

Movie Walker

緩急に富んだ役を演じる西島秀俊の人気と安定感がハンパない。主演を務める深夜ドラマ「きのう何食べた?」が高視聴率をマークしたかと思えば、まさかのピカチュウ役で声優を務めた『名探偵ピカチュウ』も大ヒット。西島にとって令和初の映画主演作『空母いぶき』(公開中)は、打って変わって、日本が直面する未曾有の危機を描くクライシス超大作だ。西島はどんな想いを胸に本作に臨んだのか?その胸の内を聞いた。

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20XX年、国籍不明の漁船20隻が日本の国領海域に侵入。漁民を装った武装勢力により、海保隊員が拘束された。ただならぬ緊迫感のなか、政府は自衛隊初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とする護衛隊群を現場に向かわせる。西島が演じるのは、航空自衛隊出身で「いぶき」の艦長、秋津竜太役だ。

■ 「この作品は『どう平和を守っていくか』を描く映画」

原作は「沈黙の艦隊」や「ジパング」で知られる、かわぐちかいじの同名コミックで、本作が初の実写化作品となった。メガホンをとったのは、『沈まぬ太陽』(09)の若松節朗監督だ。西島は「もともと原作のファンでしたし、すばらしい作品なので、このお話をいただいて、断る人はいないだろうなと思いました」と話しつつも、「ただ、参加させていただくには、覚悟のいる作品だとも思いました」と述懐。

「かわぐち先生がコミックを描き始めた2014年ごろと、いまとでは時代が違います。かわぐち先生は『もしかしたらこういう未来が来るかもしれない』と、ある種の予見で本作を描かれたと思いますが、それに現実が追いついているように思います。それはかわぐち先生が天才であるがゆえだと思いますが、だからこそ、覚悟が必要でした。もちろん僕だけではなく、キャストやスタッフさん含め、参加したみなさんはそれぞれに、いろいろなことを考えたうえで、参加されたと思います」。

折しも、平成が終わり、令和という新時代に入るタイミングで、本作が公開されるのも感慨深い。「この作品は『どう平和を守っていくか』を描く映画だと、僕は思っています。若松監督やプロデューサーもそうで、最初にお会いした時に『これは平和のための作品です』と、はっきりおっしゃられました。平和を守るためにはどうすればいいのか。自衛隊、政府、マスコミ、国民と、それぞれの対応や反応が描かれていきます」。

西島は艦長の秋津役を演じるにあたり、航空自衛隊と海上自衛隊の人々に話を聞いて、リアルな秋津像を作っていった。「クルーやパイロットだけではなく、整備士の方々にもお話を聞きました。実際に護衛艦『いずも』にも乗せていただき、当時の艦長にもお会いしました。皆さん、上官もいらっしゃるのに、すごく率直にいろいろな話をしてくださったので、多くの方々の意見を参考にしたうえで、秋津というキャラクターができあがった感じです」。

自衛隊の方々にリサーチをしたなかで、西島が新鮮に感じたのが“優秀なパイロットの条件”で、それは「熟考してベストの判断をする人ではなく、瞬時にベターな判断をできる人。あとは素直であること」だった。

「自分の行動1つが、国の運命をも左右しかねない。パイロットの皆さんは、音速で飛びながら、常にそういう重圧のなかにいます。だから、ベストよりもベターな判断ができる人なのかと。また『常に勇猛果敢、支離滅裂』ともおっしゃっていましたが、きっと素直で、より良い結果を信じ続ける方なのかなと思いました」。

若松監督からは「秋津は普通の人間ではないから、ごく普通のリアクションは一切取らないでくれ。秋津がなにを考えているのかは、誰にもわからなくていい」とリクエストされたという。実際、秋津は常に沈着冷静で、時には不敵な微笑みさえ浮かべ、着々と任務をこなす。「僕がちょっとでも熱い反応をしちゃうと、全部ダメ出しされます。非常に演出は細やかでした」。

■ 「きのう何食べた?」も『空母いぶき』も日常の大切さを描く作品」

秋津とは同期で、副長の新波歳也役を演じたのが、佐々木蔵之介だ。温かい人柄で部下からも人望が厚い新波は、自衛隊が発足して以来60年間、任務で1人も戦死者がいないことを誇りに思っている平和主義者。感情を露わにしない秋津とは正反対で、時には怒りや動揺を抑えきれず、上司である秋津に対しても物申す熱い男だ。

西島は「新波は、『絶対に平和を守るべき』という高い理想を持っていて、それを実行していく人」と捉えている。「蔵之介さんが演じることで、新波というキャラクターにすごく説得力が加わったのは、きっと蔵之介さん自身も『戦争は絶対にダメ。戦闘も避けるべきだ』と思われていて、その信念が新波の理想像と相まったのではないかと」。

秋津と新波は、時にぶつかり合うが、実は誰よりもお互いを認めているようだ。「秋津は一佐、新波が二佐で、上官と部下という立場ですが、2人がCIC(戦闘指揮所)から廊下に出て話す時、その関係性は同期に戻るんです。だから秋津は、廊下に出ると“新波さん”とさん付けをしますし、彼のちょっとした本音が出ることもあります。また、1番秋津が信頼しているのが新波で、新波も秋津の決断を信じている。本当に深い絆で結ばれた2人だと思います」。

完成した映画を観た西島は、俳優として出演していながらも「リアリティがすごい」とうなったそうだ。「事態がどんどん複雑化していき、どうなるのかわからないという、手に汗握る作品になったと思います。だからこそ、映画館を出たあと、平和な町が目の前にあることで、いまの平和の大切さを皆さんにかみしめてもらえるのではないかと」。

力強いメッセージを内包する本作だが、俳優という立ち位置から見ると、複雑な想いもあるという西島。「この映画で1番大事なことは、エンタテインメントとしてのおもしろさだと僕自身は思っています。そして、その先にあるものを、僕たちがことさら伝えようとしなくてもいいのかなと。なぜなら本作に出演すると決めた時、『ここは絶対に外さないようにしよう』という平和についてのテーマは、きっと個々に持っていたと思うので。そしてそれは、映画を観終わったあと、観た人の心のなかに自然と生まれてくるものではないかと思っています」。

それにしても、「きのう何食べた?」の料理上手なゲイの弁護士役から、『空母いぶき』の秋津まで、西島が演じる役柄の振り幅には驚かされる。「僕は作品を選ぶ立場じゃないので、いろいろな話をいただけること自体、本当にありがたいです。日常のごはんを作って食べる役と、普段はあまり実態が見えないけど、過酷な任務に就かれている自衛官の役という、まさに、日常と非日常を描く作品ですね。ただ、両作とも日常の大切さを描いている点ではつながっているので、ぜひ、2作とも観ていただきたいです」。(Movie Walker・取材・文/山崎 伸子)

最終更新:5/24(金) 6:30
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