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ファーウェイ騒動 日本に悪影響も

5/25(土) 9:00配信

アスキー

ファーウェイショックが日本にも大きな打撃に。最も悪影響を受けるのはユーザーだ。

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ファーウェイ最新製品「HUAWEI P30」 編集部撮影
 
 ファーウェイショックが日本のスマホ業界を直撃している。
 
 米商務省は5月15日(米国時間)、ファーウェイと関連企業68社を、同省産業安全局の「エンティティリスト」に加えた。これにより、リストに記載された企業に米国から製品やサービスを輸出する場合、産業安全局の承認が必要となったのだ。結果としてファーウェイと米国企業との取引は絶たれることになる。
 
 日本のスマホ業界関係者の頭をよぎったのが、昨年のZTE騒動だ。ZTEも同様の措置となり、製品のアップデートができなくなるなどの被害を受けた。
 
 そんな中、ファーウェイとグーグルはいち早く「既存のファーウェイ製品に対してアップデートを継続する」と発表。
 
 5月21日にはファーウェイの日本法人がP30シリーズの新製品発表会を開催したのだった。
 
●「HUAWEI P30」普通に買えたが
 「セキュリティアップデートは継続し、アフターサービスに影響しません。安心してご購入、ご利用ください」
 
 同社のデバイス部門、日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏はあらためて、製品に対するセキュリティアップデートやアフターサービスについて言及。消費者に安心してファーウェイ製品を使ってほしいとアピールした。
 
 しかし、その翌日、事態は急変する。
 
 KDDIとソフトバンクが24日発売予定のHUAWEI P30 liteの販売延期を発表したのだ。これに続く形でNTTドコモも「今夏発売予定」になっていたHUAWEI P30 Proの予約受付を停止した。確かにいずれもファーウェイの製品ではあるが、「キャリアの商品」という扱いとなるため、販売に関してキャリアが責任を負う部分も出てくる。キャリアとしては「本当に今後も継続的にアップデートが提供されるか」という確証が得られないため「いったんは様子見」として発売延期を決断したようだ。
 
 さらに本来であれば「SIMフリー」で、メーカーが責任を負うはずのMVNO向け製品も、MVNOが相次いで販売延期を発表した。
 
 そして、HUAWEI P30、HUAWEI P30 liteの発売日である5月24日。
 
 ビックカメラやヨドバシカメラなどの家電量販店では通常通り、HUAWEI P30とHUAWEI P30 liteが店頭に並んだ。ネット通販購入者には「本当に購入するのか」という確認のメールが送信されたようだが、購入を希望する返信を送れば発売日にはきちんと届いたようだ。
 
 筆者も、5月24日の午前10時前、都内にあるビックカメラに開店前に並び、HUAWEI P30を購入してきた。
 
 HUAWEI P30の売り場にはグーグル公式アンドロイドツイッターアカウントがつぶやいた「アメリカ政府の要求に従いながら、Google PlayやGoogle Playプロテクトのセキュリティのようなサービスが、既存のファーウェイ端末上で引き続き機能することを保証いたします」という文言が記載された紙が一枚掲示されていたのみで、特に変わった様子はなかった。
 
 店員さんから「本当に購入します?」と確認されることもなく、通常通りのオペレーションで購入することができた。
 
●日本企業と8000億円規模の取引
 5月21日の新製品発表会で、ファーウェイのデバイス部門、日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏は「ファーウェイは、米商務省産業安全保障局の決定に反対する。誰の得にもならない。巨額な経済損失をもたらし、米国の10万人におよぶ雇用に影響する。グローバルのサプライチェーンに影響する。ファーウェイは、できるだけ早く解決策を見つけて影響を減らしたい」と力強く語っていた。
 
 まさに「誰の得にもならない」というのが、今回の騒動を端的に表しているだろう。
 
 当然のことながら、ファーウェイのブランドは毀損し、世界第2位のシェアは落ちるだろう。そこで困るのは、ファーウェイに部品を収めている日本メーカーだ。今年、ファーウェイは8000億円規模で日本メーカーから部材を購入すると言われている。この売り上げが落ちれば、日本メーカーにとっては大打撃だ。
 
 また、ファーウェイはグーグルとAndroidを共同開発してきた。ファーウェイがAndroidのコミュニティから抜ければ、Androidの進化は停滞しかねない。ファーウェイとグーグルはこれまで手を取り合ってAndroidを開発していたのに、今回の騒動でファーウェイが独自OSを作るとなれば、世界的にAndroidのシェアが落ちることになる。Androidでグーグルのサービスを使う人が減れば、グーグルの売り上げも落ちるのは間違いない。
 
 また、ファーウェイは5Gの特許を相当数取得している。ファーウェイが基地局で世界から排除されれば5Gの普及も遅れることだろう。本来ならファーウェイがいることで、安価で技術的にも先進的な基地局が普及するはずだったのに、ファーウェイが選択肢から外れれば、キャリアの設備投資額は高騰化し、しわ寄せはユーザーの通信費に跳ね返ることになる。
 
 そして、最も悪影響を受けるのは我々ユーザーだ。
 
●日本のユーザーが選択肢を奪われる
 ファーウェイのスマホは、コストパフォーマンスに優れながら高性能であることから人気を高めていった。特にカメラにおいては、仕上がり具合に好き嫌いがあるかもしれないが、他社に比べて秀でたパフォーマンスを発揮する。
 
 現在ファーウェイは日本において、2017年と2018年にはSIMフリースマホ市場で第1位のシェアを誇るだけでなく、直近の2019年第一四半期のシェアでは第3位にまで登りつめている。
 
 ファーウェイといえばSIMフリーのイメージが強いが、2年ぐらい前からはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクといったキャリア向け製品も定番化してきた。
 
 かなり前にもキャリア向け製品を手がけたことがあったが、当時は品質もブランド力もいまいちで、すぐに取り扱われなくなってしまった。しかし数年で世界的にブランド力を上げ、品質も高まり、技術的にも他社を圧倒していたことから、SIMフリー市場で圧倒的な人気を獲得、さらにキャリアでも扱われることになった。
 
 日本ではNTTドコモも新料金プランを導入したことで、3キャリアで「分離プラン」が一般的になってくる。
 
 通信料金と端末代金が分離されるため「端末もできるだけ安いもの」が好まれるようになる。そんな中、ファーウェイが提供するミドルクラスの製品はまさに分離プラン時代には最適な1台になるはずであった。だからこそキャリアがこぞってファーウェイ製品を導入してきたわけだ。
 
 まさに「ファーウェイ製品が買えない」というのは、日本のユーザーの選択肢を奪うことになっている。
 
 トランプ大統領には、なんとか考えをあらためてほしいし、習近平主席との交渉がまとまり次第、キャリアとMVNOには早急に発売延期を見直してほしいものだ。
 
筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)
 
 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。
 
文● 石川温

最終更新:6/3(月) 12:25
アスキー

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