ここから本文です

プロ家庭教師が指摘 タワマン高層階育ちは中学受験でつまずきやすい

5/25(土) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【成功のヒミツ失敗しないコツ】

 都心のタワーマンションの高層階は、富裕層のステータスシンボルになっている。当然、教育にもお金が十分にかけられるため、子供の受験でも有利だろう。実際、東大生の親の6割以上が年収950万円を超えるといわれている。しかし、プロ家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さんは、「タワマンの高層階で暮らす子供は、受験でつまずきやすい」と話す。中学受験指導歴40年、多くの子供を名門校に送り出してきた西村さんは、高層階の家庭に通ううちに異変に気がついた。

「高層階で暮らすお子さんの多くが中学受験をします。難関校や中堅校までは合格しますが、ご三家など最難関校への合格は意外に少ないのです。子供たちと接していて気になったのが、一様に喜怒哀楽が少ないところです。問いかけにも反応が鈍く、表情がぎこちない点も共通しています。低層階のお子さんにはあまり見られない傾向でした」

 ある時エレベーターで20階を通過すると、耳がツーンとなることに西村さんは気がついた。これは高所特有の気圧の低下によるものだが、20階あたりから上で暮らす子供たちは外に出ることがめっきり少なくなるという。

「室内は気密性が高く常に温度が一定に保たれているので、一年を通して寒暖差が感じにくい。24時間、換気システムが働いているので、窓を開けることも少なく雨が降っていてもわからない。風のそよぎが感じられず、鳥のさえずりも聞こえないので、季節や自然を感じにくく情緒を育みにくいのです。変化の少ない室内で遊ぶことが多くなるので、身体感覚が育ちにくいのだろうと考えています」

 なぜこのような環境が中学受験に不向きかというと、入試で出題される問題は、自然での遊びを通して得られる“身体感覚”をもとに作られているからだという。

■“身体感覚”を育めない

「『見る・聞く・感じる』という身体能力を身につけてから、読み書き計算などの基礎能力を習得し、この2つを応用して問題を解いていきます。しかし、最初の段階が欠落していると、いくら机上で問題の解き方を学んでも腑に落ちないので、真の理解には至らないのです。また、自然や植物に関する問題がたくさん出題されます。田んぼの稲について出題されたとして、本による知識があっても、実際に見てみないとイメージが湧かないため解答に苦労します」

 住環境と同様に、親の影響も大きい。自らも成功し、子供の教育にも熱心な親は、子供の勉強でも「PDCAサイクル」で効率的に改善を図ろうとするなど、その熱意が間違った方向に向かいがちだと指摘する。

「ビジネスで高い目標を達成してきた親御さんほど、自分のやり方を子供に当てはめやすく、多くの場合は失敗します。経験も知識も乏しい子供は、『なるほど』『わかった』という快感を積み重ねて物事を身につけていきます。こうした体験がないままにPlan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(改善)で成績向上を図ろうとしても、うまくいきません。目標設定が子供の感覚と大きくずれるからです。学習の質量は子供が五感を働かせながら、『これぐらいだったらやれそう』『それをやれば、あんなにいいことが起こりそう』と感じられる程度が大切なのです」

 親が設定した学習量をこなすだけでは、深い理解や納得感が得られないという。次回は、中学受験に適した環境について話を聞く。

(取材・文=伊藤洋次)

最終更新:5/25(土) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事