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TM NETWORKが創造した、確かな大衆性を湛えたコンセプト作『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』

5/25(土) 18:00配信

OKMusic

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はTM NETWORKの代表作『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』を紹介したい。メディアミックスなどという言葉すらおぼつかなかった80年代後期に、アルバム、コンサートツアー、小説、ラジオドラマ、アニメ等々、多媒体でそのストーリーを展開した同作は日本音楽シーンに残る傑作コンセプトアルバムだと言える。この作品に触れることで、TM NETWORKの先見性、センス、そしてポピュラリティーの高さが実感できる。
※本稿は2015年に掲載

アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』

アルバム『CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~』(以下『CAROL』)は、作品の幕開けに相応しい、ドラマティックかつメロディアスな楽曲M1「A DAY IN THE GIRL’S LIFE (永遠の一瞬)」でスタートする。何かが始まる感じがいい。そこから曲間を空けずにM2「CAROL (CAROL’S THEME I)」につながる辺りは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に代表されるコンセプトアルバム然とした容姿。オールドロックファンも納得ではなかろうか。M1がミュージカルも主題歌やイメージソング的な位置だとすると、M2は本編のオープニング曲といったらいいだろう。《世界が今変わる》と締め括られる歌詞も物語の始まりを印象付ける。これまたいい雰囲気だ。

そこから一転、M3「CHASE IN LABYRINTH (闇のラビリンス)」はアップテンポのシャッフル。ビートも切れがよく、ギターもノイジーだが、《奪われた僕らのメロディ とりもどすのさ いつか ふたりならば怖くない》のフレーズに呼応するかのようにサビはポップなダンスチューンである。M4「GIA CORM FILLIPPO DIA (DEVIL’S CARNIVAL)」はデジタル・オリエンタル・サンバとでも言うべき、ミクスチャーナンバー。これまたポップだが、“悪魔の祝祭”とは名付けられている辺りに遊び心も感じられる。続く、M5「COME ON EVERYBODY」、M6「BEYOND THE TIME (EXPANDED VERSION)」、M7「SEVEN DAYS WAR (FOUR PIECES BAND MIX)」とシングル曲の三連発。まぁ、これらはこの位置に置くしかないかなとも思われるが、シングル版とはアレンジが異なるものの、いずれも王道の小室メロディーでいい意味で安心感がある。メロディ的ーには順序もこれがベターであろう。

M6は映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、M7は映画『ぼくらの七日間戦争』の主題歌で、特にM7は映画の内容に沿った歌詞でもあるのだが、こうしてアルバムに収まると『CAROL』の世界観にマッチしている点は見逃せない。ちなみにM5「COME ON EVERYBODY」のギターはB'zの松本孝弘が演奏しているとのことだが、ギターの音色というのはどうしようもなく演奏者のキャラクターが反映されるものだ。この音は松本孝弘以外の何者のものでもない。

M8「YOU’RE THE BEST」はソウル。オフビートが気持ちいい。M9「WINTER COMES AROUND (冬の一日)」はメロディアスだが、コーラスワークにはゴスペルを感じさせつつ、サウンドアレンジには若干サイケデリックな匂いがしなくもない。M10「IN THE FOREST (君の声が聞こえる)」はTMNらしいアップテンポのポップチューン。弾むようなサウンドアレンジで、随所で聴けるユニゾンも楽し気だ。そして、オリエンタルなムードを漂わせるM11「CAROL (CAROL’S THEME II)」をはさみ、リスナーはM12「JUST ONE VICTORY (たったひとつの勝利)」に辿り着く。大団円感満載のこのナンバーは当初はシングル化の予定はなかったとのことだが、後にシングルカットされたのも納得のキャッチーさである。後半に進むに従って各パートの手数が増えて盛り上がっていく様子はベタながら、聴いていて否定できない高揚感を生む。

ラストM13「STILL LOVE HER (失われた風景)」は、映画で言えばエンドクレジットの流れるラストシーンといった面持ち(アニメ『シティーハンター2』のエンディングテーマでもあったそうな)。後半のコーラスはこれまたベタと言えばベタなのだが、コンセプトアルバムであればこそ許せる王道のスタイルであろうし、力が入りすぎていない(ように聴こえる)のも悪くない。

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最終更新:5/25(土) 18:00
OKMusic

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