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あの日、AKB48だった無数の少女たちの「今」

5/25(土) 11:20配信

BuzzFeed Japan

華やかな表舞台を降りて

クリエイター、保育士、ラジオ局社員、アパレル販売員、保育士、広告代理店社員、声優、振付師、バーテンダー。本書に登場する8人の元アイドルたちの職業だ。

芸能界で華やかに活躍し続けている人ではなく、一般社会で地に足をつけて働いている人――大木さんいわく、「腹くくって第二の人生を歩んでいる人」を選んだ。

数百人に登るグループの卒業生の行方を一人ずつ調べ、話を聞きたいと思った相手にSDN48時代のつながりからたどって自らアプローチした。

声をかけた中には『私は今、元アイドルという人生を隠して生きています。ありがたいお話ですが、そのお話には乗れません』と回答があった人もいた。

「その時、とてもハッとしたんです。そういう生き方もあるよね、ごめんごめん、と。私は元アイドルであることを明かして顔出しでライターをしているけれど、彼女は過去としてしまって新しい人生を歩んでいる。そういう向き合い方もあるよなと思いました」

「私が真実を書かなければ! と使命感に燃えていたのですが、向き合い方は人それぞれ。『いい経験でした』と全部美談にするのも違いますよね」

「アイドル時代と無理にリンクさせるのも違うかなって」

<「お電話ありがとうございます。営業部の河野でございます」

細く通る声音が電話口から響き、私の耳元を貫いた。

こんなにすぐ「元アイドル本人」に連絡がつくとは思っておらず、私は少々面食らう。>

大木さんが印象に残っている一人が、元NMB48の河野早紀さんだ。現在24歳。大学を卒業後、ラジオ局の営業部で働いている。

「電話口での第一声、『営業部の河野です』という声がすごくしっかりしていて、その一言に彼女の人生が詰まっている気がしました」

高校2年の冬にNMB48のオーディションに合格。アイドル活動に専念するため、通っていた進学校を休学・中退するほど本気だった。

とはいえ、熱意と成功は比例しない。公演やMVで見せ場がほとんどない悔しさ、握手会で残酷なまでに明らかになる人気の差。

インタビューでは、アイドル時代の苦悩を赤裸々に語っている。

<「メンバー同士で競い合うように毎日ブログを更新して、必死で工夫して可愛く見える自撮り写真を撮って投稿しても、すぐに『コメント数』でメンバーの誰が人気かわかるんです。そういう環境だと焦るし、なんで私は人気がないんだろうとか、かわいくないしそりゃそうかと思ったり、もっといいステージをお客さんに届けて人気者になりたいとか、いろんな気持ちが湧いてきて」>

<「もちろん(アイドルとしての)経験は生かされているとは思いますが、大切なのは『今』ですから。アイドル時代と無理にリンクさせるのも違うのかなって、最近思い始めました」>

「心からアイドルになりたかったはずの河野さん。なのに、実際に競争に晒されながら必死に活動する中で、『私はみんなを輝かせるために頑張る方が楽しいんだ』と気づいたと話していました」

「今のこの仕事は本当に自分に向いているのか、もし違うなら本当にやりたいことはどう見つけたらいいのか……仕事や人生についての悩みってきっと一般の方も同じですよね」

後輩にメイクやファッションのアドバイスをしたことで「人や物をプロデュースするのが好きだ」と気付いた元AKB/SKE48佐藤すみれさん。

自分が経験できなかったからこそ、店を訪れる女性客のデート服のコーディネートを全力で考えているという元NMB48赤澤萌乃さん。

「アイドル時代はファンの人を、今は園児を笑顔にできるように」「やるべきことは一緒。やってきたことは全部繋がっています」と力強く話す元SKE48藤本美月さん。

河野さんに限らず、元アイドルという特殊な経歴を持つ彼女たちの話は、どこかで普遍的で一般的な喜びや発見につながっていく。

「みんな、生きてて迷うことってあると思うんですよ。仕事でも恋でも、人には言えないけど抱えている小さな悩みとか、言葉にならないけどモヤモヤしてる何かとか」

「だから、今それぞれの場所で頑張って生きている人たちに、何か響くものがあればいいなと思いました。読んでいて、不思議に自分の人生や価値観とリンクしませんでしたか? そういう本になったと思います」

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最終更新:5/25(土) 11:20
BuzzFeed Japan

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