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相次ぐ子どもの事故、保育士経験者が「散歩不要論」に物申す!

5/25(土) 11:30配信

アーバン ライフ メトロ

外の危険を知ることは生きる力を身につけること

 お散歩に出ることは、子どもたちにとって運動や太陽の光を浴びること以上に大きなメリットがあります。それは、子ども自身が外にはどこにどのような危険があり、どのように対処すべきなのかを学ぶことができるということ。

 その公園に行くためには、交通量の多い大通りに面した歩道を歩く必要があります。横断歩道を渡る際には、保育士は子どもたちに「右見て、左見て、もう一度右見て、渡りましょう」と声をかけていました。子どもたちと手をつないで歩道を歩く時にも、「よそ見をせずに、しっかりと前を見て歩きましょう」と伝えます。

 ある時、歩道を歩く私たちの列のすぐ近くで、スマホを覗き込んだままの歩行者が前からきた自転車に気付かずに衝突したことがありました。その様子を目にした3歳の男の子が「よそ見したら危ないね」と言い、隣にいた女の子も「『右見て左見て、もう一度右見て』をちゃんとしないと」と呼応していました。

 子どもたちは日々行っているお散歩を通じて、外では自転車や車とぶつかる危険があることを知り、その危険にできうる対処の仕方を学んでいたのです。この学びは、室内にずっとこもっていては絶対にできないことでしょう。お散歩は単に交通ルールを知ることにとどまらず、子どもがこの世界で生きる力を身につけていく重要な要素のひとつなのだと、保育士をしながら感じていました。

子どもを隔離した社会は誰にとって生きやすいのか

 また、お散歩は社会とのコミュニケーションの場にもなります。公園にいるのは、別の保育園児や一般の親子、仕事の休憩をするサラリーマン、近所に住む高齢者など、さまざまな人たち。

 保育園に通う子どもは、どうしても家庭と保育園以外の人と接する機会をなかなか持てません。そんななか、お散歩で出会う「他の人たち」と挨拶したりお話をしたりすることで、子どもの社会性はより育まれるでしょう。数多くの他者を見たり言葉を交わして関わったりすることで、子どもは自分の世界を大きく広げることができると考えます。

 小学校に上がれば、保育園とは異なり、多くの子どもたちが親の付き添いなしで学校の登下校を行うことになります。今よりも交通量が多い道路を歩いて行く必要があるかもしれません。また、不審な人から声をかけられることがあるかもしれません。

 その時に何をどうすべきなのか、自分の頭で考え、行動できる子になってほしい。保育園におけるお散歩は、そうした役割も担っているのではないでしょうか。

 お散歩をさせず、子どもを家庭と保育園内に閉じ込めておけば、子どもたちが事故に遭う確率は少なくなるでしょう。しかし、それは子どもが生きにくく、大人が生きやすい社会を醸成していくことであり、大人が子どもに教えるべきことや果たすべき役割を放棄しているようにも感じてしまいます。

「大人が車を安全に運転することができないから、保育園におけるお散歩を廃止しよう」というのはあまりにも大人重視な考えです。「お散歩は不要だ」という人は、今一度考え直してみてほしいと思います。そして、街でお散歩中の園児を見かけた時には、挨拶をしたり話しかけたりしてみてください。それが子どもにとって大切な社会経験のひとつになるはずです。

秋山悠紀(ライター)

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最終更新:5/25(土) 17:54
アーバン ライフ メトロ

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