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「中央高速バス」はなぜ高速バス市場のお手本に? 変化する甲信地方の高速バス事情

5/26(日) 6:01配信

乗りものニュース

「東京~長野市」は話が別!

 一方、東京から軽井沢や、佐久、上田といった長野県の東信地方へは、京王ではなく、西武バスが中心になって路線を広げました。そのため東京側は新宿ではなく、池袋を中心に路線網が構築されているほか、特に長野市に発着する路線は、中央高速バスとは異なる競合環境が生じています。

 2002(平成14)年の高速ツアーバス容認(その後、2013年に従来の高速バスと「新高速乗合バス」制度に一本化)により、首都圏や京阪神から長野県を結ぶ路線に、高速ツアーバスの新規参入がありました。東京~長野県内のように片道4時間程度までの中距離路線は、後発参入がふつう難しく、競争は限定的です。それでも、東京~長野市間では新旧の事業者が競い合うことになりました。

 うち2陣営は、中距離路線では珍しく、既存事業者(高速ツアーバス登場以前からの乗合バス事業者)どうしの競合です。この東京~長野市間はもともと、京王/川中島バス(現・アルピコ交通)が中央道経由で運行していました。1990年代に上信越道が開通すると、そちらに経路変更されて所要時間が短縮しますが、同時に西武バス/長電バスが競合として同区間へ参入したのです。

 上信越道経由の東京~長野市間は、中央道経由の東京~松本間などと異なり、競合相手の鉄道が在来線特急ではなく新幹線となるため、所要時間の差が大きくなります。加えて、既存事業者が2陣営に分かれたこともあり、地元で強く定着することがありませんでした。これは、同じ長野県の路線でも、伊那・飯田、松本方面などで高速バスが大きな存在感を持っているのと対照的です。そのことが後発事業者にもチャンスを与え、現在では、後発参入のウィラーと昌栄高速運輸(長野市)も一定のシェアを確保しています。

外国人利用者が急増 恵まれた観光資源をどう生かすか

 そして近年、甲信地方で好調なのが、訪日外国人とりわけFIT(個人自由旅行者)が急増している、富士五湖、松本、白馬などを発着する路線です。

 新宿~富士五湖線では近年、「富士山と五重塔と桜が1枚の写真に納まる」として、タイからの観光客を中心に「新倉山浅間公園」(富士吉田市)の人気が急上昇し、最寄りの「中央道下吉田」という停留所の乗降人数が突如として増えるという現象がありました。北アルプスを背景に漆黒の天守がそびえる松本城も、世界的なガイドブックの表紙を飾るなどしてFITに人気です。

 国内有数のスノーリゾートである長野県の白馬は、国内のスキー市場縮小により、ピーク時(1992年)に比べスキー客は3分の1程度に落ち込んでいました。しかし、近年はオーストラリアやニュージーランドを中心に海外から大勢のスキーヤーが訪れるようになり、冬場の白馬八方バスターミナルはスキー板を担いだ外国人であふれかえっています。2014年に運行を開始した成田空港~白馬線は、多くの空港~観光地直行路線が苦戦するなか、数少ない成功事例といえます。

 長い歴史を誇る甲信地方の高速バスですが、沿線人口が減少を続け「地元から東京への足」としての市場が縮小するなかで、恵まれた観光資源を活かして国内外の観光客を取り込んでいくことが期待されています。

成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)

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最終更新:5/26(日) 13:27
乗りものニュース

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