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「刑は果たして適切だったのか」 裁判員の葛藤

5/26(日) 20:04配信

福井新聞ONLINE

 「主文」。裁判長が口を開いた瞬間、裁判員の男性(51)は法廷にいた被害者の顔を見ることができなかった。今年、福井地裁で開かれた裁判員裁判。判決は検察側の求刑より軽かった。「被害者はどう感じているのだろうか…」との思いが頭を駆け巡った。

 初公判の約1カ月半前、男性宅に裁判員を選ぶ「選任手続き」の呼出状が届いた。早速会社に報告、当日は有給を取った。裁判所の受け付け番号札をもらった。出席者は31人。事件の概要が知らされ、関係者であるかどうかなどを記入する質問票に筆を走らせた。

 「選ばれるかも」「いや選ばれないだろう」「せっかくの機会。選ばれたい」。期待と不安が交錯した。

 くじで選ばれた番号がモニターに表示された。「20番」。自分だった。まさかと思ったが、頑張ろうと気持ちを切り替えた。

 「1人の人生を左右することになる。生半可ではいけない」。先入観を持たないよう、インターネットで類似事件を調べることはしなかった。公判にはスーツで臨んだ。被告や証人の発言内容はもちろん、声色や表情の細かな変化も見逃さないよう気を張った。

 4日間の公判と評議のうち、特に印象に残ったのは終盤に行われた被害者家族の意見陳述。「家族も苦しんでいる」と涙ながらに訴える姿に「家族構成が自分と似ていたこともあり、胸が締め付けられた」と振り返る。

 審理終結後、裁判員6人と裁判官3人でさまざまな観点から議論した。「裁判長が議論しやすい雰囲気をつくってくれたからか、活発に意見を言い合えた」。だが、量刑を書く用紙が配られると体がこわばった。「これが人を裁く重圧なのか」

 現在、福井地裁の裁判員裁判で裁判長を務める渡邉史朗刑事部総括裁判官は「チームとして結論を出したのだから、一人で悩みを抱え込むことはない」と語る。だが、男性は「刑は果たして適切だったのか」と今でも考える。

 2009年5月の裁判員制度開始から10年。福井地裁では今年2月末までに59件の裁判員裁判があり、332人が裁判員に選ばれた。そして、男性のような332通りの葛藤が繰り広げられた。

 選任手続きで、裁判員に選ばれず「ほっとした」と話す人もいる。裁判を終えた今、男性は「貴重ないい経験。やって良かった」と語る。正直、公判中は思い悩んだ。ただ、最終日に裁判所を出た時、何とも言えない充実感があったのも事実だった。

 裁判員制度のシンボルマークをかたどったピンバッジと感謝状。男性は、市民の責務を果たした証しを手に「司法を身近に感じるようになった」と話す。法廷に立った経験は自身の人生史に深く刻まれている。

 × × ×

 裁判員制度が始まって5月21日で10年。福井県の裁判員裁判はどうだったのか。裁判員経験者や識者、県内の法曹三者の声を紹介し、検証する。

福井新聞社

最終更新:5/27(月) 6:53
福井新聞ONLINE

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