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旅ブロガー活用でバラ色イメージ売り込み 「ピュアな国」パキスタン

5/26(日) 16:19配信

AFPBB News

(c)AFPBB News

【5月26日 AFP】欧米諸国の若き旅インフルエンサーたちがこぞってやってきて、パキスタンは「ピュアな国」だと褒めそやす。だが、評論家らは、これらインフルエンサーは色眼鏡を通してパキスタンを語っており、保守的で紛争の傷跡が残るこの国の不正確なイメージを売り込んでいて無責任だと警告する。

 パキスタンの治安状況は改善しており、元クリケット選手のイムラン・カーン(Imran Khan)首相は観光誘致に力を入れている。また、政府は外国人観光客のビザ(査証)発給制限を緩和したと宣伝している。

 この結果、外国から旅行ブロガーらが大挙して流れ込み、山や海の美しさ、古代インダス(Indus)文明や仏教寺院、イスラム教施設など豊かな遺産と歴史を褒めたたえている。

 食と旅のユーチューバー(YouTuber)のマーク・ウィーンズ(Mark Wiens)さんは「パキスタンへの旅は一生に一度のものだった」と、400万人のフォロワーに語り掛けた。

 また、ポーランド人ブロガーのエバ・ズベック(Eva zu Beck)さんはフォロワーに、パキスタンは「世界一の観光地になる」可能性があると語り、カナダのインフルエンサー、ロージー・ガブリエル(Rosie Gabrielle)さんは、自分がパキスタンの「真実を語りたい」とつづった。

 だが、インフルエンサーらの投稿は、観光インフラ整備の遅れや過激主義など、近代的な観光地を目指すパキスタンが直面する重大な課題を取り上げていないという懸念がある。

 ズベックさんの投稿はパキスタン当局によってシェアされ、パキスタン航空(Pakistan International Airlines)が彼女のパートナーとなっている。ガブリエルさんの3500キロに及ぶパキスタン縦断バイク旅行は、オマーンのパキスタン協会の支援があった。

■もう一つのパキスタン

 パキスタンはかつてヒッピーに人気の旅行先だったが、1970年代に国全体がイスラム化を遂げ、その後に流血の紛争状態に陥り、訪問者数は激減した。

 死者を出す襲撃は今なお起きているが、治安上の懸念は緩和されつつある。当局と実業界はパキスタンが敵対的で危険な国だというイメージを拭い去ろうと躍起になっており、徹底的な調査をするというよりも、きらびやかなシーンを切り取って紹介する「インフルエンサー」の起用に特に熱心だ。新しい世代の若者や冒険好きの旅行者にパキスタンの新たな面を見せることができるためだ。

 だが、パキスタン人と経験を積んだ外国人旅行者らは、それらはパキスタンの全体像を正確に表現したものではないと警鐘を鳴らす。

 同国の観光インフラ開発は著しく遅れており、外国人が訪問できる場所に関する政府の規制は不透明だ。家父長的社会のパキスタンでは、女性が男性から嫌がらせを受けたり、情報当局によって好奇心旺盛な旅行者が拘束されたり、治安当局者が同伴を主張したりすることもしばしば起こる。

 英国人女性ジューンさん(51)は「『パキスタンは何もかも素晴らしい』というのはまったく無責任だ」と憤激する。ジューンさんはパキスタン北部スワト(Swat)渓谷を訪問中、警官から嫌がらせを受けた経験がある。

 首都イスラマバードでこのほど開催された観光サミットに出席したザラ・ザマン(Zara Zaman)さんは「これら(インフルエンサー)旅行者は全員が案内付きで、しかも有力者の保護を受けて観光している」と指摘する。

 例えば、パキスタン・トラベル・マート(Pakistan Travel Mart)の最高経営責任者(CEO)アリ・ハムダニ(Ali Hamdani)氏は、ウィーンズさんの運転手を務め、あらゆる問題に対処した。

 ズベックさんとガブリエルさんは、風光明媚(めいび)な南西部バルチスタン(Balochistan)州を訪れることができたが、この地域は暴力的な反政府活動でも知られ、情報機関の許可なしに訪問できる外国人はほぼ皆無だ。

■「植民地時代の遺物」

 パキスタンを5回訪れている米国人ブロガーのアレクサンドラ・レイノルズ(Alexandra Reynolds)さん(27)は、インフルエンサーの投稿は「本当の体験を表していない」と指摘し、経験の乏しい旅行者はインフルエンサーのコンテンツに惑わされて危険な目に遭う可能性があると警告する。レイノルズさんは、以前の旅で治安部隊から嫌がらせを受けた体験があると明かした。

 別の旅行者セバスティアン(Sebastiaan)さん(30)は昨年9月、政府機関職員らに疑いを掛けられ14時間にわたって拘束され尋問されたという。

 また、地元のパキスタン人も不満を漏らす。当局は欧米のブロガーらをもてなす一方で、特に男女間の違いや冒涜(ぼうとく)的言動など繊細な問題について文化的理解が深い現地の人々のことを二の次にしていると指摘する。

 ザマンさんはこう話す。「白人がわれわれを代表していることに腹が立つ。植民地時代の遺物を完全に拭い去れていないということだ」

 映像前半は、ブロガーのエバ・ズベックさん、ロージー・ガブリエルさん、アレクサンドラ・レイノルズさんの映像と写真。撮影場所、撮影日は不明。後半は、イスラマバードで4月3日に開かれた観光サミット。(c)AFPBB News

最終更新:5/28(火) 14:36
AFPBB News

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