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「それでもいいから会いましょう」 話せない…「空気」だった場面緘黙の私 「お面」で得た人とのつながり

5/30(木) 7:00配信

withnews

 誰かとつながりたい、でも、声が出ない。大人になってから病気だと知るまで、人とのつながりを実感できないまま生きてきた男性(31)。話せないために「空気」のように扱われた高校時代、「消えてしまいたい」と思うほど追い詰められた先には、想像していたよりもずっと鮮やかな世界が待っていた。自分の病気への理解とともに、「お面」によって広がった人生。男性のこれまでを振り返る。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

【写真】「自分でも人を幸せに…」やっと人生が始まった 女性の「お面」かぶる男性

女性の「お面」をかぶる男性

 「いまは、お面は5つ持っています」

 少しハスキーな小さな声で話し始めたのは、色白で小柄な男性。女性の着ぐるみ姿で、「ほづみりん」として2012年頃からTwitterやYouTubeで活動を発信している。

 「僕の病気の特性上、『マスク』より『お面』という言葉の方が、発音しやすいので」

 マスクの呼び方について聞くと、そう答えが返ってきた。

 ほづみさんは幼いころから、家の外では声を出すことができなかった。話したいことはあるのに、話している姿を誰かに注目されていると思うと、怖くて声を出せない。小学校の授業で先生にあてられても答えられない。クラスメイトと会話することもできず、休み時間もじっと席に座っていた。

 でも、家に帰れば、学校で見たクラスメイトのように話すことができる。先生や親は「恥ずかしがり屋」「おとなしい性格」と言った。ほづみさん自身も、性格がそうさせているのだと思い込み、周りの子どものように振る舞えない自分を責めるようになった。

どちらが「本当の自分」なのか

 「食べるときは口を動かせるんだね」、クラスメイトにそう言われて、給食が食べられなくなった。体育の授業は、体が硬直して動けない。学校のトイレにも行けないため、できる限り水分もとらないようにしていた。

 学校は休めなかった。休んでいる間に自分の悪口を言われるのではーー、そんな強迫観念に駆られていた。休んだ日のノートやプリントも「見せて」の一言が言えない。とにかく通うしかなかった。

 「みんなはきっと努力して話せるようになったんだと思っていました。自分には努力が足りていないのだと」

 日に日に劣等感は強まっていった。中学の進路指導の授業で、将来のことを考える。高校入試の面接、大学、就活、社会人生活……どこかで必ず行き詰まる。

 「そんなことを考えても、そのときはもう自分は死んでしまっているのでは」

 どこか客観的にそう感じる自分がいた。家にいる自分と学校にいる自分、どちらが「本当の自分」なのかがわからない。三者面談で先生が言う「物静かで真面目な子」は、自分のことなのだろうか。いずれにせよ、家の外にいる自分には、存在意義が見出せなかった。

 「社会生活を送る上で、コミュニケーションをとるということは、人間の本来のあるべき姿ですから」

 大学時代、物理学を学んでいたというほづみさんの話には無駄がなく、理路整然としている。

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最終更新:5/30(木) 7:00
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