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「それでもいいから会いましょう」 話せない…「空気」だった場面緘黙の私 「お面」で得た人とのつながり

5/30(木) 7:00配信

withnews

「空気」だった高校時代、今でも夢に見る

 ほづみさんは「うなずくだけでいいから」と、面接を配慮してくれた私立高校に入学した。環境が変わったことを機に、「これ以上ないくらい勇気を振り絞って」声を出してみた。どんな声が出たのか、自分でも覚えていない。同じ中学だったクラスメイトが笑っているのが見えた。無理は、長く続かなかった。

 「やっぱりダメなんだ」ーー。自分への諦めを強くするばかりだった。

 高校は早朝から授業が始まり、10時間目まであった。その後予備校へ行き、終電で帰る生活。食事もとれず、トイレにも行けない。

 クラスメイトは、「話せない」ほづみさんを「空気」のように扱った。このまま社会に出ても生きていけないだろう。「大学へ行くための踏み台」と割り切って、高校生活を送った。

 その過酷さに、大人になった今でも週に3回は高校生活の夢を見る。朝起きると、高校に行かなければと焦燥する。

 「ちゃんと卒業できたという感覚がないんだと思います」。高校はもう行かなくていいのだと、枕から見える位置に大学の卒業証書のコピーを置いていても、過去のつらい記憶が追いかけてくる。

初めてかぶった「お面」

 誰ともコミュニケーションがとれない中で、追い詰められた高校生のほづみさんは精神的な居どころを探った。

 物心ついた頃から「友だち」と呼べる相手はいなかったが、近所の同世代の子どもに女の子が多かったため、幼い頃からぬいぐるみやセーラームーンがほづみさんの身近にあった。

 「かわいい」と思えるものに惹かれる。将来に先詰まりを感じるなかで、幼い頃のわくわくした気持ちが、ずっと心の中で輝いていた。

 高2のとき、貯めたお年玉を使ってほづみさんが買ったのが、フルフェイスのヘルメットのように顔を覆う「お面」だ。たれ目でほほえむ顔に、胸のあたりまであるピンク色の髪。

 鏡の前に立つと、つらい現実にいる自分とはかけ離れた姿があった。そして、その姿を「かわいい」と思えた。人とのつながりを感じられず、自己否定を続けてきた生活に、小さな波が生まれた。

 活発そうな目の前の女の子は、自分の歩めなかった人生を生きてきたように見えた。お面の写真に目を落としながら、「こんな子に、なりたかったんだと思う」と自分に言い聞かせるように話す。

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最終更新:5/30(木) 7:00
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