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キャンディーズの7thアルバム『夏が来た!』に現在まで続くアイドルグループの原型を見る

5/29(水) 20:02配信

OKMusic

若きムーンライダーズが参加

ベタな言い方をすると記録より記憶に残るグループだったと言えなくもないキャンディーズであるからして、彼女たちが遺したアルバム作品の中から代表作をひとつに絞るのはなかなか困難だ(筆者は彼女たちの直撃世代ではないので尚更のこと)。通常このコラムでの作品のチョイスは、“このアーティストならこれしかない”という誰もが認める作品か、それが選べない場合は初ミリオン作とか、ミリオンでなくともブレイクのきっかけとなったナンバーが収録されている作品とか、初のチャート1位獲得作とか、そういった観点で作品を絞っている。前述したライブ盤『キャンディーズ ファイナルカーニバル プラス・ワン』でもよかったのだが、ライブ音源2枚+スタジオ録音1枚というのは、半可通には手に余る。荷が重い。即ち気も重い…などと思いつつ、キャンディーズのディスコグラフィを眺めていると、“7枚目のアルバム『夏が来た!』にムーンライダーズが参加している”という記述を見付けた。

収録曲のクレジットを見てみると、M5「さよならバイバイ」とM10「MOON DROPS」の編曲が“鈴木慶一とムーンライダース”名義。また、M5とM9「季節のスケッチ」が1977年までムーンライダーズのギタリストであった椎名和夫が作詞作曲を手掛けたナンバーで、M10とM11「雨の日に偶然」の作曲者が同バンドのキーボーディストの岡田徹とある。“鈴木慶一とムーンライダース”がアルバム『火の玉ボーイ』でデビューしたのが1976年1月で、キャンディーズの『夏が来た!』の発売が1976年7月。はちみつぱいからの流れを考えると日本ロック史の重要バンドのひとつと言えるムーンライダーズとはいえ、その頃はまだ新進気鋭と言っていい存在だったであろう。鈴木慶一の他、当時のムーンライダーズのメンバーは1975年からアグネス・チャンのバックバンドを務めていたそうで、そうした活動の経緯からキャンディーズ作品への参加することになったのだろうが、彼らの起用が英断ではあったことは想像するに難くない。その辺の興味から、今回は極めて独断的に7枚目のオリジナルアルバムである『夏が来た!』を取り上げることにした。

というわけで、そのムーンライダーズ関連作から見ていこう。まずM5「さよならバイバイ」から。イントロのキーボード(シンセ?)を左右に振った音作りをしている辺りから何とも幻想的。そこにパーカッシブなリズム、ギターのカッティング、流麗なストリングス(たぶんバイオリン)が重なっていく。いずれも派手に自己主張しているわけではないが、なくてはならない音としてそこに存在している。ムーンライダーズのファンはニヤリとさせられること間違いなしのサウンドではなかろうか。それでいてメロディーはメジャー感があってポップ。可愛らしい印象だ。サビあとにCメロ(大サビ)が用意されているのもドラマティックでいい。歌詞は今で言う“ツンデレ”で、先見性があった…とは流石に言い過ぎだろうが、そうした女性アイドルグループならではのコケティッシュさを助長したと思われる。

同じく“鈴木慶一とムーンライダース”が編曲したM10「MOON DROPS」もムーンライダーズ的というか、M5以上にバンドサウンドであることが分かるナンバーだろう。テンポは緩いが実にグルービーである。楽曲が進むに従って各パートがフリーキーになっていくというか、熱が高まっていくような印象もある。まぁ、そうは言っても、それはロックバンドのようなものではなく、もちろんキャディーズの歌唱を妨げるまでにはなってないのだけれども、多彩に奏でられるギターや巧みなコーラスワーク、サイケデリックな味付けを含めて、そのサウンドメイキングにバンドの矜持を感じるところではある。アイドルグループの楽曲は今も基本的には歌の旋律や歌詞の物語性が最重要であろうし、少なくとも当時はそこまでサウンドが重要視されていなかったであろうが、ここまで仕上げたムーンライダーズもすごいが、それを受け止めたキャンディーズも懐が深かったということだろう。

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最終更新:5/29(水) 20:02
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