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金正男暗殺、実行まで……「いたずらキス」実は殺しの訓練? 「ハナモリ」と呼ばれた男の正体

6/8(土) 7:00配信

withnews

 「いたずら番組の撮影」と称して金正男(キム・ジョンナム)氏に毒を塗ったとされるベトナム人のドアン・ティ・フォンさん(31)は、事件前に繰り返し「テスト撮影」に挑んでいた。通行人に声をかけ、やにわにキスをして驚かせる。そんな撮影は実のところ、正男氏を殺すための「予行演習」だったと、マレーシア捜査当局はみている。(朝日新聞国際報道部記者・乗京真知)

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最初は失敗続き

 フォンの供述調書によると、テスト撮影が始まったのは2016年の暮れ。クリスマスのころだった。

 その日、韓国のカメラマン「ミスターY」を名乗る男が、フォンの携帯電話に連絡してきた。「きょう撮影をしたい。午後3時、(ハノイ)の劇場の向かい側に来てほしい」。ミスターYは少し前に、ハノイのバーで撮影話を持ちかけてきた男だ。

 ミスターYは待ち合わせ場所に、キャノン製のカメラを持ってきていた。撮影の要領を説明し、通りすがりの東アジア系の中年男性を指さした。「(中年男性に)話しかけた後、ほおにキスをして驚かせるんだ」

 フォンは指示に従った。中年男性に近付き、「ハーイ」と声をかけた。人違いだと思われたためか、相手にされなかった。キスをするはずだったが、「ごめんなさい」とだけ言って、引き返した。

 商業施設でも撮影を試みた。あいにく施設は閑散としていて、いたずらの相手が見つからなかった。撮影は空振りに終わり、フォンは出演料をもらえなかった。

贈り物で甘やかし

 ミスターYはフォンの気持ちが折れないよう、あの手この手でやる気をかき立てた。供述調書には、その様子も記されている。

 たとえば、ミスターYは撮影失敗の後、フォンをカラオケに誘った。酒をごちそうし、韓国料理店にも連れて行った。また、「クリスマスのプレゼント」だと言って小遣い(45ドル)を渡したり、大みそかには次の撮影で使うからと「ピンクのジャケット」を買い与えたりしたという。

 甘やかすばかりでもなかった。ある日、ミスターYは「ボス」を連れてきた。「ボス」は撮影がうまくいっていないことを案じ、「次はしっかりと撮影をするように。そうすれば報酬を払う」とはっぱをかけた。

 「ボス」は自らを「ハラボジ」(韓国語で「おじいさん」)と呼ぶように勧めた。フォンは「ハラボジ」の発音がうまくできなかったため、発音しやすい「ハナモリ」と呼ぶことになったという。

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最終更新:6/14(金) 23:50
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