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病を得ても大切な「役割」を守り続ける 「こどもとの時間を奪われるなら治療なんて受けません」(後編)

5/30(木) 15:01配信

BuzzFeed Japan

前回の記事では、医療者と患者さんの対話の不足から、医療の本質が見失われたり、結果的に患者さんが民間療法へ流れる原因となったりしているのではないかという話をしました。

今回は、家族と少しでも長く過ごすために通院による抗がん剤治療を選んだタムラさんのその後の話を追いながら、なぜ彼女がそれほど「母親として」息子さんとの時間を大切にしたがったのか、見ていきます。

※5月28日に『がんを抱えて、自分らしく生きたい』(PHP研究所)を出版しました。「がんを抱えて自分らしく生きるためには、医師に頼るべきではない」の一文から始まる本書から、特にお伝えしたいエピソードをご紹介します。
【寄稿:西智弘・緩和ケア医、腫瘍内科医】

「役割」は生きがいや家族と同じくらい大切なもの

「喪失体験ゲーム」というのをご存じでしょうか?

私が講演などを行う前に、参加者の緊張をほぐすために行うミニゲームのひとつです。

具体的には、まず参加者に白紙のカードを5枚配り、そのカードに「家族」、「友達」、「健康」、「お金」、「生きがい」、そして「役割」という文字を思いを込めて書いてもらいます。

そして、私と参加者とで一斉にジャンケンをして、「あいこ」か「負け」の場合は、「あなたが失っても良いと思うもの」どれか1枚を選んで破り捨ててもらいます。そしてまたジャンケンを繰り返して、破り捨てる…...の繰り返し。

破り捨てるときに悲痛な叫びをあげる方もいます。今まさに、その方は喪失の苦痛を疑似体験しているのでしょう。

結果的に一度もジャンケンに勝てなかった人は残り1枚だけとなりますし、ジャンケンに全部勝って全てのカードを残す人もいます。

ここで面白いのは、年齢や背景によって何から破りはじめるかが異なるという点です。

子どもを対象にしてこのゲームをやると、「お金」から破りはじめる人が多い。子どもにとって、お金は親が持っているものであり、普段は使わないことが多いからでしょう。

それに対し、エグゼクティブクラスの方々に行うと、「生きがい」を最後まで残す人が多い。「生きがい」は趣味や仕事の全てを含んでおり、それがなくなるなら生きている価値がない、と感じる人が多いのかもしれません。

そして、このカードの中で多くの参加者が首をかしげるのが「役割」のカード。「役割って何ですか?」と質問されることも多い。そして何だかよくわからないまま、その「役割」のカードを早めに破り捨ててしまう人もいます。

でも、よく考えてみてほしい。どうしてこのカードの中に「役割」が、「お金」や「家族」と並ぶものとして入っているのかを。それは「役割」が、あなたが生きていく上でとても大きな価値を占めているからなのです。

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最終更新:5/30(木) 23:27
BuzzFeed Japan

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