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「自分をログオフしたい」着ぐるみをまとう女性 マスク越しに見えたのは「他の誰でもない私」

6/11(火) 7:00配信

withnews

 女性の「着ぐるみ」を着る女性がいる。ぬいぐるみのようなふさふさしたものではなく、人形のような顔つきのドールタイプと呼ばれるもの。どうして着ぐるみを身につけるのか。その理由を知りたくて、取材を申し込むと、髪色が少し明るいアクティブそうな女性が現れた。屈託のない表情で「自分を『ログオフ』したい」という女性の話から、インターネットではふりほどけない「自分」への固定概念の根深さを考える。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

【画像】思わずため息が出る可憐さ…「自分を『ログオフ』したい」女性の着ぐるみを着る女性 

「女性の着ぐるみ」、中の人である女性は…

 「いや、コンプレックスとかは全然ないんですよ」

 取材場所のカフェに訪れたあきらさん(28)は、くりっとした大きな目に、明るく弾むように話す女性。「友だちが多そうだな」というのが、私(筆者)の印象だ。教室のはじっこにしても、元気な声が聞こえてきそうな、快活な人。

 あきらさんは大学生の頃から、女性の着ぐるみを着て写真を撮影したり、それをネットで発信したりしている。アニメのキャラクターやオリジナルなど、家には7種類のお面があるという。

 女性が「女性の着ぐるみ」を着ていると聞き、もしかすると何かを抱えている人かもしれないと気構えていた私(筆者)。しかし、その明るさに少し拍子抜けした。慎重に越したことはないけれど、思い込みで腫れ物に触るように感じさせてしまっては申し訳ない。

 「恐る恐る接してしまって、気を悪くしたらすみません」と謝ると、「もっと暗い人とかだと思ってました?」と、あきらさんはあどけなく笑う。

アルバイトして購入、加工は自分で

 あきらさんは、幼い頃から遊園地などで開催されるキャラクターショーが好きだった。今でいうプリキュアのような、人型の女の子の着ぐるみを見て「いつか着てみたい」と思ったという。

 中学生になると、インターネットで着ぐるみの情報を集めた。着ぐるみのマスクの土台となる「素体」を販売している工房のホームページや、趣味で着ぐるみをつくったり着たりしている人のブログをブックマーク。

 マスクは素体だけでも数万円、完成しているマスクであれば10万円以上するものもある。「自分が持つのであればどんなものだろう」とシミュレーションし、見て回るのが習慣だった。

 大学で一人暮らしを始め、アルバイトで稼いだお金で初めてマスクの素体を買った。マスクはFRPと呼ばれる強化プラスチックでできている。飛行機や船舶でも使用される、日常生活ではあまりなじみのない素材だ。

 あきらさんは、これまで集めたサイトやブログの情報をもとに、自分なりにマスクの加工を始めた。素体には肌のベースがあるのみで、着色もされておらず目も髪もない。理系の研究室に所属していたため、ときには隣の研究室で余った接着剤などを分けてもらいながら、家のベランダで最初のマスクを完成させた。

 マスクの話になると、あきらさんの目はさらに輝く。「自分でつくるなんて、すごいですね」と言うと、「作業量とクオリティの対価として、支払う金額が体感できるじゃないですか」とあきらさん。「いずれ複数体、着ぐるみを持つことを覚悟してましたから」

 「せっかくなんで、いろんな子になりたいんですよね」

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最終更新:6/11(火) 7:00
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